木嶋真優 ヴァイオリンリサイタルを聴く (2021/10/24)
 

   


2021年10月24日、沼隈サンパルホールにて木嶋真優のリサイタルが開催された。
ピアノは江口氏だ

彼女のヴァイオリンを聞いたのは、以前リーデンローズであった広響定期公演でのチャイコのヴァイオリンコンチェルト以来だから、5年ぶり2回目となる。

実はその時の印象はあまりいいものではなかった。音量が大きくて良い音を出している一方で、彼女独特の演奏とテンポでヴァイオリンとオケが掛け合いというよりは、むしろ喧嘩しているような印象を受けたからだった。そして彼女に笑顔はなく少し冷たい印象。演奏後のアンコールなどもなかった。
あれからテレビのバラエティーなどにも良く出演し、風変わりな性格などが受けて一般の人への知名度も上がったのではないかと感じる。
さて今回のソロコンサート(ピアノ伴奏付)ではいったいどんな感じになるのか、期待と不安が入り混じった状態で開演時間を迎えることになった。


セットリストは
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 エルガー:愛のあいさつ
 プロコフィエフ:組曲「ロメオとジュリエット」
         1.序章
         2.ジュリエット
         3.騎士の踊り
         4.バルコニーの情景
         5.カップルの踊り
         6.マーキューシオ
         7.戦いとティボルトの死
 ガーシュイン(ハイフェッツ編):「ボギーとベス」より
           サマータイム
           そんなことどうせもいいさ

 〜 休憩 〜

 スメタナ:「わが故郷より」から 第2番 Andantino
 フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調
         第一楽章  Allegretto ben moderato
         第二楽章  Allegro
         第三楽章  Recitativo-Fantasia(ben moderato)
         第四楽章  Allegretto poco mosso

 ◇ アンコール ◇

 カッチーニ:アヴェ・マリア
 イグデスマン:ファンク・ザ・ストリング(木嶋真優編)
 ドビュッシー:月の光
 モンティ:チャルダッシュ

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となっている

1曲目の愛のあいさつから木嶋節。そしてそれは最後の曲まで続く。
決して変な逸脱した演奏ではないけれど、これまで聞いたことが無いくらい個性的で面白い。
その個性的な演奏から、伴奏の江口氏は苦労されているのではないかと感じる部分もあったけれど、聞いている側としてはとても興味深く、終わってみると彼女はこういった自由なコンサートにこそ本当の真価を発揮するタイプではないかというのが正直な感想だ。
彼女の音は音量あって流石のソロヴァイオリニストというボリューム。高木凛々子ちゃんよりさらに大きな音が出る。

楽器は今回初めて知ったけれど、貸与された1699年製のWalnerというストラディバリウスとのこと。
これまで私が直接聞いたストラドはパールマン、諏訪内、千住、高嶋、高木に続いて6本目ということにはなるのだが、はっきりいって全員音質が違う。テレビの格付け番組でストラドを当てる問題が時々あるけれど、正直なところ必ず当てられる自信が私にはない。
一つの共通点としては倍音が良く出ているという部分があるのだけれど、今回の彼女の音はその倍音は比較的少な目に感じた。一方でとても柔らかくて聴いていて気持ちのいい音だと思った。

尚、前回のコンサートでの彼女は冷たい印象だった。テレビのバラエティーでは尖ったことを含め良くしゃべる印象。ところが今回のコンサートでは曲間などでお客さんを意識してかとても場を和ませるような話が多く、話し上手でなかなかの好印象を持った。

そしてアンコールがまた面白くて、ファンク・ザ・ストリングなんかはクラシックから飛び出しためちゃ格好いい演奏。チャルダッシュは後半のフラジオレットの部分なんかこれまで自分が聞いた中ではどの演奏家より一番きれいな音が出ていたし、最後の速弾きの部分は史上最速じゃないかと思えるほどのスピードで、誰にも負けないぞといったような気合のようなものまで感じるものだった。

今回のコンサート、一言で印象を言うと「本当に自由な人だなぁ・・・」
好きか嫌いかと聞かれるとちょっと困るのだけど、聴いていてとても面白かったので、次にもし彼女の演奏を聴くチャンスがあったら是非またその木嶋節を聴きに行きたいと思う。
今回のコンサートで彼女のイメージは良い方に変った。
この彼女の自由さを高木凛々子ちゃんもすこし見習ってもらいたいものだとも思う。



広響第22回福山定期演奏会、木嶋真優を聴く(2016/2/7)