2013 五老ヶ滝 ナイトレインボウチャレンジ





6月30日
突然テレビ局のADさんから掲示板に書き込み


  Title: 月虹撮影ご協力のお願い


  突然のご連絡失礼致します。

  私、テレビ○○制作局のAと申します。
  実は現在、私が担当している「△さんの××で教えてくれないそこん△△△」
  という番組で、「月虹を見に行く」という様な企画を考えております。

  日本のどこかの滝で行えればと、様々なHPなどを調査していた際、
  こちらのブログを拝見させて頂きました。

  もしよろしければ、月虹を撮影したときの事など、
  お伺いさせてもらえればと思っているのですがいかがでしょうか。

  ご連絡頂ければ幸いです。
  宜しくお願い致します。

  △△△△
  090ー○○○○ー○○○○
  ・・・・@tv・・・・.co.jp



差出人は東京の某民放局からで、それも番組はゴールデンタイムのメジャーなバラエティー番組。
月虹撮影についてはこれまで過去数社から問い合わせをもらったことが有ったのだが、実際にテレビ撮影にまで至ったことは一度もない。撮影が確実に出来るものじゃないからだろう。
「またどうせ企画倒れになるんじゃないだろうか・・・・」と直感的に感じた。

ただ今回少し違うのは、これまでの問い合わせは主にテレビ局直接ではなく、番組制作を請け負った制作会社からだった。今回直接テレビ局の製作からの問い合わせとは珍しい。
もしかしてやる気になっているのかな?・・・・

そんなことを考えつつ、こちらも仕事が忙しくてしばらく放っておいたところ、7/4さらに催促の書き込み

掲示板を運営していると怪しい書き込み等も結構あるのだけれど、メールアドレスはちゃんとしたものだし、月虹がテレビで取り上げられること自体は自分にとってありがたいこと.。さらにはメジャーな番組だ。
というわけで、一応こちらからメールを送ってみることにした。



  テレビ○○ A様

  こんにちは
  花鳥風月庵というHPを運営しております”はじめ”と申します
  このたびは掲示板「百家争鳴」に月虹撮影の件でお問い合わせを頂きありがとうございました。
  私のほうで協力できることは協力させていただきます。
  ただ私はこれまで10滝ほど月虹の撮影を成功しましたが、結局は天気次第なので、
  私でも3度に一度程度の成功確率です。そのつもりでお願いします。
  月虹の主な内容は一昨年こちらで説明していますので、是非ご覧ください
  http://www.ustream.tv/recorded/17198450
   
  ではご連絡お待ちします
 
 
  花鳥風月庵 管理人 はじめ


そしてここから長いやり取りが始まることになる





1.事前問合せ

1回目の先方の要望
 ・関東地方でムーンボウが撮影できる滝を教えてくれないか
   → 静岡の白糸の滝もしくは日光華厳の滝なら比較的容易
      ただし時期指定あり、白糸なら7月、華厳なら9月以降
 ・HPにある写真以外の写真を送ってもらえないか
   → 動画で紹介済みの写真および華厳の滝であれば可能

2回目の要望
 ・夜の滝の原理を説明できる専門家をしらないか
   → 知らない。そちらで大学の先生にでも頼んだらどうか
      動画は見られましたか?
       → いや見ていない

3回目の要望
 ・8月が放送予定なので白糸の滝で話を進めたい。
  月が出ない時の保険のためにライトアップして虹を写すことはできないか

   → やってみないとわからない
 ・撮影時(7/22)に出演できないか
   → 当日は会議の予定があるので一旦断る
      写真・撮影位置・ライト設置位置の指示はこちらからメールで行う

4回目の要望
 ・予め7/15にロケハンを行いたい。その際に参加してもらえないか
   → 15日なら参加可能

5回目の要望
 ・白糸の滝が世界遺産登録のために滝壺が立ち入り禁止になっていて、テレビの説明をしても許可がでない
  関東以外の滝でも良いので7月の満月にムーンボウを写せる滝は無いか

   → 熊本県の五老ヶ滝なら撮影できる

6回目の要望
 ・熊本、五老ヶ滝で撮影を計画したい。ついては15日(海の日)にロケハンを行うので立ち会って欲しい
   → 了解
 ・やはりどうしてもテレビ出演してもらいたい。22日にお願いしたい
   → 着帽&メガネでも構わないなら出演しても良い





こういった経緯をへて7月15日に熊本駅でMディレクターと待ち合わせをすることになった




7月15日

 14:00 過ぎの新幹線に乗って熊本駅に向かう
 17:00 熊本駅東口で待合せ
先方、MディレクターとAアシスタンドディレクターの2名が熊本空港からレンタカーでやってきた
車の後ろには100W太陽光ライトとガソリン発電機が乗っている。
どちらかでレンタルしてきたらしいが、これを滝まで持っていくつもりなのか?と思うほど重そうだ
おそらく30kg程度はありそうな発電機である
 なんせこの日は月が出なくても虹が取れるかどうかというのが一番のポイントだから仕方ない
7月22日に月が出れば月虹が見られるだろうことは保障してあげてもいいが、雲に隠れることも想定しないといけないし、8月放送予定の番組に穴を開けることは許されないということのようだ。次の満月では間に合わない。
しかしたった100Wのパワーで虹が出るんだろうか??

 18:30 五老ヶ滝に到着
水が多く月虹に対する水量としては申し分ない状況
  たたずむMディレクター

まだ明るいので、ライト投光テストには時間がある
以前この滝で月虹を撮ったときに食べて美味しかった「おちか」のラーメンを一旦食べに行って暗くなるのを待つことになった。

特製ラーメンを注文
 焦がしニンニクが効いてて絶品

「おちか」さんは気さくなおばちゃんで、親切に何でも話してくれる
ただしムーンボウについては「ふーん・・・?」という全く知らないという態度
まぁ仕方ない

ラーメンを食べながらMディレクターといろんな話をした
・テレビ○○は福山では直接写らないけど、その番組は再放送で別の局で放送されるということ
・じつはこの番組にお昼の仕事の関係で自分がお世話になったことがあること
・この番組製作のチームは6チームあって交代で番組を作っているということ、自分が昼間の仕事で関係したチームではないこと
・番組製作を制作会社に依頼することもあるが、この番組についてはすべてテレビ○○の社員で行っていること
・テレビ○○では逆さ言葉(「ギロッポン」「ザギン」「シースー」など)はほとんど使わず、使うのは歳をとっている人に限られること
・・・・・等々


それから予想外の提案
「今回一緒に登場するタレントはまだ決まっていないけど、希望があれば聞いておきます」
今考えているのは福岡にいまいる我が家もしくはにしおかすみこ・春香クリスティーンあたりだそうだ

せっかくなのでこちらの希望も言ってみる
自分の希望は南沢奈央・K瀬那奈・乃木坂46の衛藤美彩が良いと説明
芸人さんは仮に感動してもなんか薄っぺらい気がする
南沢奈央はNHKのサイエンスゼロでアシスタントをしているので、科学的なことについて説得力がありそう
あとの二人は完全に自分の好みだが、衛藤美彩は大分出身なのでこの滝のことを知ってそうだ

一方ディレクターによれば、女優さんはちょっと汗をかくだけですぐメイクさんを呼んだりするので撮影が大変になるということで、でもAKBあたりはメイクさんは来ないから良いみたい。
それにK瀬は新宿2丁目あたりで遊びまわっているという噂があるとかないとか?
まぁ一応希望としては聞いておきますということだった。





食事を終えて、滝の駐車場まで戻った頃にはすっかりあたりは暗くなっていた
半月少し前の三日月が夜空に見える


駐車場からライトを投光する吊橋の上まで高低差は50m
30kgの発電機をそこまで降ろすのは実際どうかと思ったけど、ディレクターさんは「行きます」とのこと
ADの女性も「私たちでやります」ということだけど、あと登ってくるのに大変だぞこりゃ・・・・
途中の展望台まで降りてきて一休憩
そこで一旦ライトをつけてみる・・・・・滝に向けて照らしてはみるが、たいして明るくならない
いかにもパワーが弱そうだ

展望台から吊橋までは本当に急な下りなので、「もう止めますか?」と聞いたら
「いやせっかくなので行きます」とのディレクターの回答
がんばって吊橋まで降ろす



そこからは僕が滝壺へ、テレビ局の2名は吊橋の上でライトの位置を調節
連絡は携帯電話で取り合うことになった

なんせ本来は40度の角度で虹が発生するわけだが、太陽光や月光のような平行な光ではないので、もっと角度が大きくなり、自分の影の方向が当てにできない

ライトを滝に当て、滝壺で自前のKissX5で写真を撮ってみる
肉眼でも虹は見えないが、カメラの液晶を見ても虹があるように見えない
ISO1600/F2.8/15秒で滝そのものは写るので、この100Wのライトで月光の約半分くらいの光量はあるようだ

角度が不足しているようなので、自分の位置をできるだけ前に、そしてライトの位置一番右側に移動してもらう
肉眼では何も見えないが、液晶に写った写真にはなんとなくアーチがあるような・・・・


そこから2mずつライトを左に移動してもらい都度写真を撮ってみたが虹は写ってそうにないので、もう一度一番右端に移動してもらい自分は左端一杯に移動。そこで写真を撮って終了。
そこに写っているのが虹なのかどうか判別がどうもできない。



吊橋まで戻り、画像をMディレクターに見せる。
そこから機材を展望台まで運んで休憩。

吊橋からAD氏がcanonEOS5Dを使って動画を撮ってみたが何も写らなかったとのことだったので、自分のKissX5でも同様に撮ってみた。
ISO3200まで上げてみたけど、真っ暗でなにも写らない
単純計算だと ISO102400でSS1/4sec、もしもフレームレート1/30secのシャッタースピードが必要ならISO819200なんてすごい感度が必要になる。

「最新の5Dmark3ならどうでしょうか?」と聞かれたけど
「わからん・・・・プロに聞いてみて」としか答えられない
そもそも高感度カメラじゃないと写らないって言ってたはずなのに、5Dで間に合わせようとは・・・
NHKスペシャルでイグアスの滝のムーンボウを高感度カメラで撮って世界初とか言ってたんだけどね


発電機のほうはガソリンが少なくなってきたので少しは軽くなったとは思うけどそれでも重い
駐車場までやっと引き上げて撤収完了
22:30をもうすぎていた





この日は熊本のホテルに泊まる予定
熊本までの車の中でまたいろいろ話を聞いてみた

「高感度カメラの使用は難しいんでしょうか?」
→ 高感度カメラは専門のカメラマンが必要なので費用がとても高くなる

「そもそもなんでムーンボウを扱おうを思ったんですか?」
→ 夜の虹ということでライトアップしたところに散水して虹を出すイベントがあった。
   そこから夜に虹が見られるのかという疑問に答える形

  (ということはムーンボウ自体は主役じゃないのかも)

「今回3日間撮影チャンスがあるけど(7/21-23)、もしタレントさんを呼んでその日に見れなかったらどうするんですか?」
→ それは見えた体でVを撮っておく。そういったパターンは良くある


ホテルは先方の用意してくれた熊本城のそばのキャッスルホテル
到着は24:00(てっぺん)を回っていた

チェックインしてさて部屋に入ろうというときに、Mディレクターからまた一つ頼まれた
「ストーリー展開的に、どうして五老ヶ滝になったのか、はじめさんがまず説明してからそこに向かうというくだりが欲しいので、自宅でロケをさせてもらえませんか」
そりゃちょっと・・・・・・まあ家のものと相談してみます




7/16 
10:31の新幹線さくらに乗り込む
福山着は12:40
そこから家のパソコンで撮った写真を現像してみる
みてみると虹がなんとか写っていた

ライトが吊橋の一番左のとき
 

中央
 

最後の一枚、一番右側
 
こちらは副虹も写っている



この結果をMディレクターに早速メール
1.今回のライトでちゃんと分光して虹が発生するということ
2.照明のパワーは今回の最低2倍は欲しいということ
3.照明の設置位置は吊橋の右端できるだけ高い位置の方が望ましいこと
4.肉眼で虹を確認するには撮影位置をもっと前にして岩場あたりが望ましいこと

5.動画撮影には高感度カメラが必要なこと
6.自宅ロケでなく屋外にして欲しいこと、できれば他の滝撮影中にしてほしいこと
2〜4の条件が揃えば70%は「肉眼」で虹が見られるのではないかとメールに書いた
もちろん空が晴れたらという前提ではあるが

ロケを行うのならやっぱり肉眼で虹が見れないとタレントさんも大変だろうと思う




数日してからMディレクターから電話
結局この企画は中止になったとのこと

・・・やっぱり・・・


夜の虹撮影に確実性がなかったからだろう
時間を掛けて撮影に望まないとさすがにムーンボウは難しい
自分個人でもムーンボウがその日に撮影できる確率は50%未満なんだから・・・・・

でも、もしかしたら高感度カメラの費用が予算オーバーだったので没になったのではないかとも思った



なんだかんだあったけど、結局は楽しい体験だった