登山初心者に向けての 楽な山の歩き方                              2024/01/05
 

私は滝巡りを趣味としていて、2023年11月現在で3,000滝訪問を達成したところだ。
その滝巡りではしばしば登山を強いられることになるわけだが、歳をとっていくとともに登山が辛いと感じることが結構増えてきた。
なので、体力の衰えを補うために(ダイエットも含めだが)、福山市の蔵王山にできるだけ毎日登ってトレーニングを繰り返している。
しかしやはり毎日の登山は結構つらい。登りながらできるだけ楽な登り方はないものかといつも考えながら歩き、それはもう500回を越えた。
そしてその歩き方についてはいろんなYoutubeのサイトを見て楽な歩き方を探ってみるのだが、サイトによっては話されていることが全然違ったり、わかりにくかったり、実践してみても納得できないものが多いのも現実。
そもそも山歩き用の筋肉を持っている人が出しているYoutubeの内容が私のような登山初心者にとって本当にマッチするのかどうか、どうも怪しい気がする。
結局は自分で実践して納得できる登り方を探すしかないということで、これまで工夫しながら登山トレーニングをしたその楽な登り方の方法を納得できる理論的な部分から順に一度ここにまとめてみたいと思う。
尚、私はもっぱらミドルカットシューズの中でも足首が動きやすいタイプのシューズ(mont-bell マウンテンクルーザー400W)を愛用しているので、足首の動きが制限されるようなハイカットシューズを履いて歩かれている方には適合しない部分もあるかもしれない。
 
 
 

1.どこの筋肉が一番疲れやすいのか

歩く際には腰・膝・足首の3か所の関節を曲げたり伸ばしたりしながら歩くことになる。
腰の関節は尻の筋肉・膝関節は太ももの筋肉・足首の関節はふくらはぎの筋肉がつかさどられることになるわけだが、当然足先の方の筋肉の方が細くて疲れやすいのではないかと思う。
少なくとも私はふくらはぎから一番に疲れを感じ、尻の筋肉はさほど疲れを感じることはない。
つまり関節をベースに負担を考えると
 
足首 > 膝 > 腰
という順で疲れやすいということになると思う。
但しこれは個人の歩き方・シューズなどによって多少の差があるので、疲れやすい部位順の対策をとるのも有効だと思う。
 
 

2.関節を曲げれば曲げるほど筋肉への負担が大きくなる

まずは上りについて考えてみる

1) 足首の関節(=ふくらはぎの疲労)の場合


足の裏はフリーでは大体水平方向に向いている。
歩くときに足首に体重が乗ることが無ければふくらはぎの筋肉はほぼ使う必要がなくなるわけで、その状態が一番筋力を必要としないということになる。
ところが人は歩くとき、後ろ足で蹴りだしてしまい、そのときに一瞬だけ足首に体重を乗せて前進するために力を入れがちになる。
これが上り坂だとさらに足首は曲がってしまい、足首に体重が乗ることが多くなってしまう。
つまり
 足首の関節を曲げて歩けば歩くほど、ふくらはぎの筋肉を多く使うことになる。(足首に体重をのせることが多くなる)
この対策としては
 ① 後ろ足で蹴らずに歩く
 ② つま先側に体重を乗せない

この2つに尽きる
そのための歩くコツは

● べた足で歩く。前足が着地してから後ろ足のかかとを上げる感じ
● 後ろ足のかかとを上げる際に、前に蹴らずに少しだけ足を上方に上げて体重がつま先に乗るのを防止する(上級)
● なるべく、つま先上がりのところに足を置かない。かかとを比較的高いところに置く
● どうしてもつま先上がりになるときは、すこし足先を外に開き気味にする。もしくは斜め横に向いて登る
● 大股で歩かない。特に急な斜面は歩幅を狭くする


 ※ ハイカットシューズであれば足首の疲れはいくらか軽減されることになる


2) 膝関節・股関節(=ふとももの疲労)の場合

大腿骨が真下を向いているとき(立っているとき)は太ももの筋力はほぼ必要としない。
しかしもし大腿骨が水平方向に向いていたとすれば(中腰など)体重そのままを太ももの筋力で支える必要があることになる。
太ももの筋肉は下方向ではなく関節を中心とした回転方向に対して力を発揮することになるから、大腿骨の角度が真下に向いているところから水平に近づけば近づくほど体重を支えるのに多くの筋力が必要となるわけだ。
つまり
 膝関節(股関節)を曲げて歩けば歩くほど太ももの筋肉を多く使うことになる。(体重を支えるのに多くの力が必要となる)。
この対策としての歩くコツは

● 高い段はなるべく避けて、低い段に分けて登る。階段脇の斜面などは積極的に利用する
● 急斜面は歩幅を狭くする、もしくは斜めに登る(およびジグザグに登る)
● 高い段はまっすぐに足を出さず横(斜め)に足を出す

 
 ※ 単純計算では、20cmの段を1回で登る場合と10cmの段を2回登る場合を比較すると、1回で登る方は約1.2倍の筋力(仕事量)が必要という結果になった。
      

3) 腰椎(=腰の疲労)の場合

腰についても膝と同じことがいえる。前項でも触れたように、人は直立しているときはほとんど腰に負担はかからない。
しかし、前かがみの状態でそのままじっと立っていたらどれだけ疲れることだろう。
歩く際も同様で、前かがみの状態は疲労を誘うことになり、それが腰痛につながる一番の原因だと思われる。
このことは上りも下りも平坦な道でもあらゆるタイミングでかかわってくる問題だから絶対に気を付けて避けないといけない。

理想的な歩く時の姿勢は骨盤の上に上半身の重心がくるのが良いということになるわけだが、一方で山を歩く際はどうしても足元を見ながらということになり、腰が曲がり気味になってしまう。

人は進化して二足歩行をするようになったわけだけど、それは頭が重くなったことによると言われている。上半身で一番重いのは間違いなく頭だ。
つまりなるべく直立した状態で歩くためのコツとしては

● 肩を引いて背筋を伸ばして歩くこと
● 顎を引いて足元を見る。頭が前になるべく出ないように
● へそから歩くくらいのイメージで歩く

尚、前かがみにならないためにはリュックに入れる荷物のパッキングにも注意する必要がある。
重いものはなるべく背中から近くの上方にパッキングするのが良い。
三脚を持ち歩く際はリュックのサイドポケットにセットするのがよく、逆側のサイドポケットにペットボトルの水などを入れて左右の重量バランスをとるのが理想的なのだが、どうしてもバランスが悪くなってセンター付けしないといけないときは、重い運台が頭のすぐ後ろになるように、やや斜めにセットするようにすれば改善することができる。


3.下りの歩き方は

下りでも基本は登りと同じだが、問題点は主に二つ。滑って転倒しやすいことと、膝を痛めがちになることだ。
膝を痛める原因は着地の際の衝撃によるものだと思われがちだが実はすこし違う。本当の原因は着地の衝撃を和らげるために、上方の足の膝関節が曲がった状態でブレーキをかけるように力を入れてしまうことだ。
(現実として私は右ひざが痛くなる傾向にあるのだが、階段を降りる際は知らず知らずのうちに痛い右足の方から降りている。逆に左足から降りると余計に右ひざのほうが痛くなる傾向があるせいだ。おそらくこの原因は着地する前側の足の膝関節の上下の骨は近づく方向に体重がかかっているが、後ろ側の足の膝関節の上下の骨は離れる方向に体重がかかるからではないかと思う)
登りの際とは異なり下りの際は力を入れるのが後ろ側の足であるがゆえに、力を入れた際に後ろ足の膝がつま先よりも前に出てしまいがちになる。ちょうどスクワットをするときに膝がつま先よりも出ないようにしないと膝を痛めてしまうというのと同じ理屈だ。これが膝を痛めてしまう大きな原因だと思われる。
※ 着地の衝撃でひざを痛めると言っているyoutuberたちは、仮にインストラクターであろうと医者であろうと、単に再生数といいねが欲しいだけの人たちだと思うから私は見ないようにしている。

したがって対策としては
① 後ろ足の膝を大きく曲げずに降りること
② 身体の重心をなるべく後ろに残すこと

が重要なポイントとなる
尚、スリップ防止については余裕をもって急いで降りないことも肝心だ
歩くコツとしては

● 前かがみになりすぎない。足元を覗き込むような体勢で歩かない。肩を引いて顎を引き目で足元を見る感じ
● 急な斜面は特に小股で歩く、もしくは斜めにジグザグに歩く。左右の足の間隔を少し広げて歩くのも有効
● 高い段はなるべく避け、階段脇の斜面など中間を使うことができれば積極的に利用する
● どうしても高い段を降りなければならない場合は身体を横に向けて横向きに足を出す。その際に軸足をひねらないように
● ストックをなるべく利用する

 
 

4.基本的なこと

実際に二足歩行をするためには人はバランスをとるための力が必要で、なるべく無駄な力を使わないことも重要だ。さらに危険を回避する必要もある。
(上り下り両方に該当)

● 右足は右の腰の前に出し左足は左の腰の前に出す。2本のレールの上を進むように歩く。ペンギンのように歩く
   (平均台の上を歩くように一本の線の上を歩くのは転倒の危険が増すし、無駄な力を必要とする)
● 内股で歩くと膝を痛めやすい。足の親指が進行方向に向くくらいがちょうど良い
● 歩き始める際、身体が暖まるまでは70%程度のスピードで歩く。いきなり100%で歩くと、ばてるのが早くなる
● 小石などの動くものの上になるべく足を置かない。動くものの上に足を置くと疲れが増す上に危険。できるだけ硬い岩や土の上に足を置く
● 湿った茶色い岩・濡れた木および粘土質の土は極端に滑るものなので、危険回避のため足をできるだけ置かない
● 足元をしっかり見て足を置くところを確認しながら歩く

 
 

5.ストックの使い方

ストックは疲れを軽減し転倒を防止するのに登りの際にも下りの際にもとても有効だ。(特にダブルストックの場合)
また膝を痛めるのを防止するとともに腰痛を防止するという意味で、ストックを利用しない手はないと思う。
使用のコツは、ストックに力を一番入れやすいのは、腕が下向きで肘の関節がなるべく伸びた状態のときだということ。

● ストックの持ち方はストラップの下側から手を通してストラップごとストックをつかむようにすること
● ストックの長さは階段に立った際に、ストックを持ったまま手を伸ばして下の段にちょうど届くくらいの長さに調整するのが良い
● 登り通常時は、左足を出すときに右のストックをついて、右足を出すときは左のストックをつく。要するに普通に歩くのと同じ
● その際、ストックをつく位置は前方ではなく身体の真横もしくはやや後ろ側につく。ストックで身体を持ち上げるのではなく、前方への体重移動の補助として利用する感じが良い。そうすることによって姿勢が良くなり腰痛防止につながる
● 階段もしくは高い段を登る際は、両側のストックを足元にまずついてから上の段に登り、同時に手で(腰の横で)押し上げるようにする
● 下りの際はストックを下の段に先についておいてから足を下ろし、着地の衝撃を和らげると同時に上側の足の負担を軽くする。このとき前かがみの姿勢になるようであれば、ストックの長さを調整するかストックの天を持って対応する
● 膝が痛い場合、痛い膝の反対側のストックに力を入れて歩くと痛みが緩和される
● ストックをつく位置が滑らないところであることに毎回充分気を付けること
● ストック先端のキャップは道を守るためのもの。本来キャップが無い方が滑りにくいので、TPOに合わせること
● 谷側にストックをつくときには体重を乗せないようにすること。(滑ったら滑落する)
● 梯子や鎖など手を使って昇り降りする必要があるときは、面倒でも一旦ストックをしまうこと

 
 

6.その他

● グループで登山をする際に速い人についていこうとしないこと。あくまでマイペースで登ること。速い人が遅い人にペースを合わせること
● リュックをおろしてとるような大休憩は身体を冷やすことになるので、息を整えるくらいの小休憩を時々とった方が疲れが少なくて済む
● 仮に腹が減っていなくても、ある程度の決まった時間には行動食をとるようにしないと結果的に疲労が大きくなる
 

 

7.まとめ

ここまでずいぶんたくさんの項目となってしまったけれど、まとめとして最低限覚えておいてほしいこと4つを七五調で
特に①~③は関節をなるべく曲げずに歩くための有効な方法だ

① 「肩を引き、顎を引いて、足元見」 前かがみの姿勢はNG、重心が前に行くほど疲れが大きくなる。さらに上りでは腰痛、下りでは膝痛の原因に。
② 「高い段、二段に分けたら、二割楽」 
高い段の昇り降りはなるべく避け、遠回りでも低い段を選ぶこと。どうしても避けられないときは斜めに足を出す
③ 「後ろ足、蹴るとふくらはぎ、パンパンに」 
なるべく後ろ足で蹴らずにベタ足で歩くこと。つま先側に体重を乗せないこと
④ 「見栄はって、速く歩けば、すぐ自滅」 
無理に速く歩こうとしたり、格好つけてストックを使わなかったりするのは自滅への道。あくまでマイペースで歩くこと
 


今後ももしかしたら増えていくかもしれないけど、気づいたことは現在のところこんなところ
靴や服装についても注意するべき点があるけれど、それについてはまたの機会に