フルサイズカメラの画質はISO40相当

  (フルサイズカメラの利点ってなんだ?)


現在デジタル一眼レフの主流はAPS-C
この規格はセンサーサイズによるもの
 
もともとアナログのフィルムカメラの規格は35mmフィルムで、この規格のセンサーサイズを持つものをフルサイズカメラと呼んでいる
具体的には

  メーカー カメラ センサーサイズ 焦点距離
換算係数
フルサイズ キヤノン EOS−1DSU
EOS−5D
36mm 24mm 1
ニコン D3 36mm 23.9mm 1
APS−H キヤノン EOS−1DV 28.1mm 18.7mm 1.3
APS−C キヤノン EOS−40D
EOS−KissX2
EOS−KissDX
22.2mm 14.8mm 1.6
ニコン D300
D80
D60
D40X
23.6

23.8mm
15.6

15.8mm
1.5
ペンタックス K20D
K200D
23.4

23.6mm
15.6

15.7mm
1.5
ソニー α350
α700
23.5mm 15.6

15.7mm
1.5
フォーサーズ オリンパス E−3
E−420
E−510
17.3mm 13mm 2.0
パナソニック DMC−L
DMC−L10K
17.3mm 13mm 2.0
(2008年5月現在)

とまぁこんな感じになっている
APS−Cの場合、NIKONその他とcanonとでは少しセンサーサイズが異なっているが、ここからは話を簡単にするためにcanonのEOSのことについてのみ述べることにする

さてフルサイズカメラとAPS−Cのカメラで全く同じ写真を撮ろうとした場合なにがどう違ってくるのだろうか?
これが今回の考察である。




1.焦点距離

上の表で、焦点距離の換算係数というのは「フルサイズカメラ(35mmフィルムカメラ)と同じ画角を得るための焦点距離はAPS−Cの場合いくらになるかを換算するための係数」だ。
フルサイズカメラでの焦点距離50mmの画角(水平40度、対角47度)を得るためにはAPS−Cカメラでは50÷1.6=31mmで31mmの焦点距離のレンズを使えばフルサイズ50mm相当の画角となるわけだ。
同じくフルサイズで28mm(水平65度、対角75度)の画角の写真を撮ろうとするとAPS−Cカメラでは17mmの焦点距離のレンズが必要だ。
水平40度とか水平65度とかいえばわかりやすいのに、フィルムカメラの焦点距離を基準にして画角を50mmとか28mmとかいうから話がややこしくなる。
最近のコンデジは広角28mmとかいうけど、本当はコンデジのレンズの焦点距離は28mmなんかじゃなくてたった4.6mm(IXY910IS)しかない

このようにフルサイズカメラでは同じレンズを使っても焦点距離を1.6倍換算してやらなければAPS−Cカメラと同じ画角の写真は撮れない事になる。

このセンサーサイズの1.6という係数が今回の主役でもある。



2.被写界深度

このようにセンサーサイズによってフルサイズとAPS−Cでは1.6倍相当の焦点距離の違いが発生するが、違いはそれだけではない。
それは被写界深度(ボケ量)の違いである。

被写界深度とはピントが合っている距離の範囲のことでだ。
レンズには絞りというものがあって、光の入ってくる量を調節するところがある。F値という数字で表され、数字が大きくなるほど光が通る穴が小さくなる。
穴の直径とF値の逆数は比例するものと思ったら良い。
つまりF4とF8ではF4の方が2倍直径が大きくて光が入ってくる量は2の二乗で4倍になる。おなじくF5.6とF8ではF5.6の方が直径が1.4倍大きく光が入ってくる量は2倍になるということだ。(これを1段という)

そしてこのF値に応じて被写界深度(焦点深度)は大きくなる
この被写界深度というのは下記の計算で表される

被写界深度
  = 前方被写界深度+後方被写界深度

前方被写界深度
  = 許容錯乱円径×F値×被写体距離^2/(焦点距離^2+許容錯乱円径×F値×被写体距離)

後方被写界深度
  = 許容錯乱円径×F値×被写体距離^2/(焦点距離^2−許容錯乱円径×F値×被写体距離)

許容錯乱円径
  = フィルムやCCD・CMOS画面の対角線長さ/K(定数)

ここで許容錯乱円径というのは人が見る写真の角度を50度として、ピントが合っているのかどうか判別できる角度をCCD上の距離に置き換えたものだ
つまり人の目の分解能を表している。
許容錯乱円径はセンサーサイズに比例するので、フルサイズではAPS−Cの1.6倍になるとこになる。

もしも全く同じ被写界深度でフルサイズとAPS−Cとで撮影するにはF値をどうすればいいか
上の式を計算していただければよいが、フルサイズで撮る場合はF値を1.6倍(+4/3段)すればAPS−Cと同じ被写界深度で撮ることができる。
たとえばAPS−CカメラでF5で撮った場合と同じ写真をフルサイズカメラで撮るにはF8で撮れば良い。

このようにフルサイズカメラではF値を1.6倍(+4/3段)にしなければAPS−Cカメラと同じ被写界深度の写真は撮れない事になる。



3.シャッタースピードとISO

シャッタースピードは動くものの写真を撮る場合や滝の写真などでは重要な要素だ。
フルサイズでは上の理由からF値を1.6倍にして撮影する必要があるので、当然光が通る穴の径が1/1.6に小さくなっていることになり、同じ露出(明るさ)の写真にしようとするとシャッタースピードは1.6の2乗分(2.5倍)に長くしなければならない。
ところが同じシャッタースピードじゃないと全く同じ写真にならないので、同じシャッタースピードで露出をあわせるためには必然的に感度を上げる必要がある。
つまりフルサイズカメラではISOを2.5倍(1.6の2乗)にしないとAPS−Cカメラと同じシャッタースピードにならないのだ。
仮にAPS−CでISO100の場合なら、フルサイズカメラではISO250にする必要がある。

これでやっとAPS−Cとフルサイズでまったく同等の写真を撮ることができたわけだ。

  使用レンズ 感度 絞り シャッタースピード
APS−C 17mm ISO100 F5 1/100sec
フルサイズ 28mm ISO250 F8 1/100sec

一般的にはISOを上げて(高感度にして)撮影した場合は写真がザラザラになってきて画質が低下する。
ところがフルサイズカメラの場合はセンサーの受光面積が広いことによってS/N比が高くノイズに強いのでISOを250に上げてもAPS−Cより画像が劣化することはない。



4.フルサイズカメラが風景写真に適している理由。

風景写真の場合は三脚を使用して撮るのが一般的。そうすると手ぶれの心配もない。
もしここでISOを上げずにAPS−Cと同じISOのまま2.5倍のシャッタースピードで写真を撮ることができたらどうだろう。

ISO250で撮ってAPS-Cと同等なのに、ISO100で撮るということは、APS−Cから考えるとISO40相当で撮ったに等しいことになる。

感度は低ければ低いほどノイズが少なく滑らかで豊かな階調の写真を撮ることができることは多くの方が御存知の通りだ。




そして一方、被写界深度の深い風景写真から離れ、APS−Cカメラでフルサイズカメラと同じボケ量(空気感)の写真を撮影しようとした場合、
APS−Cでは明るくて高価なレンズが必要になってくるという点もある。

つまりこれがフルサイズカメラの利点というわけだ。