ローズコンサート2023 広島交響楽団演奏会
  竹澤恭子を聴く
 
 






2023年5月14日、ローズコンサートに広島交響楽団が登場。
今期はメンデルスゾーン特集となっていて、ソリストは竹澤恭子だ。
彼女は現在56歳。いまも活躍を続けている日本のヴァイオリン界の巨匠の一人と言っても良い演奏家。海外の数々の有名オーケストラとの共演やCD録音を残しているだけでなく、ロンティボーなどではコンクールの審査員もされているようだ。
さてどんな演奏を聴かせてくれるのだろう・・・


今回のコンサートはローズコンサートの一部ということで補助金もあるのだろう、リーデンローズ大ホールで行なわれる通常の広響の演奏会とは異なり全席自由席で値段も2500円と格安。ただし全自由席だから、もしかしてギリギリに行くと良い席に座れなくなる。というわけで30分前に会場に入ることにした。するとすでに結構な数の人が席についてはいたが、1F中央やや右寄りのいつもの定位置に座ることが出来た。
結局、1Fはほぼ満席。2F・3Fは空席が目立つ感じだった。



さて、感想
1部
1曲目は「静かな海と楽しい航海」。なるほどこんな演奏もいいと思う。
2曲目が「ヴァイオリンコンツェルト」。竹澤氏が登場。いつの間にこんなに貫禄が出たのだろう。昔はスタイルも良くて美形だったのに・・・といっても何十年も前の話なので、こんな失礼なことを言ってはいけないと反省。
演奏はさすがというか風格まで感じさせるもの。ふくよかでロマンチックでメリハリがある。オケのテンポを意識的に変えるようなところもあったりする。音程自体は高木凛々子ちゃんほど正確ではなくて、たまに#気味にはなるけれどそれもよし。とても感動的な演奏だった。
ヴァイオリンは1724年製のストラディバリウス。音も彼女の体系からというわけではなくてふくよかな印象を受ける。
尚演奏中、立ち位置は普通は指揮者よりやや前に立つもんだけど、彼女はほぼ指揮者の真横に立っていたのでヴァイオリンに指揮者の左手が当たるんじゃないかと心配になるときがあったし、一方でコンマスのそばに移動して何か話しかけるような仕草を見せたりもしていた。
広響の演奏はとてもバランスが良くてみんな上手。ヴァイオリンとのかけあいも上手いしソロヴァイオリンの音がオケに埋もれることもなくてとても良かった。
尾高さんの指揮は傍から見ていてもとても分かりやすいというのも感じた。
曲が終わって「ブラボー」の声。このブラボーには賛同したかった。
その後竹澤さんのアンコールのヴォーン・ウィリアムズ「揚げひばり」がソロで演奏されて1部が終了した。
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追記
彼女の使用している1724製というストラディバリウスについてちょっと調べてみたが、NETではたくさんの記事が出てくる。
 時期不明 使用楽器は1710年製「カンポセリーチェ」(日本音楽コンクールHP1982年)
 1991年・2019年、愛器1735年製「サマズイユ」でCD録音
 2006年、1707年製「ハンメル」が売りに出た。(それまで貸与されていた)
 2020年、1699年製「レディ・テナント」(ストラディヴァリウス・ソサエティから貸与)を使用

どうやらこれまで4種のストラドを弾いていたらしい。
ところがパンフレットに記載されている1724年製のストラドはどこにも出てこない。
ということは、また違う5本目のストラドを新しく弾いてるのだろうか・・・
ひとつ謎が増えた気がした

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2部
交響曲4番「イタリア」
尾高さんが指揮台に上がるやいなや演奏がスタート。広響は弦が良く揃っているのが印象的。演奏とは関係ないけど、コンマス(蔵川さん?)がリバーサルオーケストラの門脇麦ちゃんと重なって見えて仕方ない。髪形を寄せてるんだろうか・・・
曲が終わってまた「ブラボー」の声。どうもこの曲は感動するところがわからないんだよな。
アンコールはやはりメンデルスゾーンの「弦楽のためのシンフォニア第2番」
良い演奏会でした。これで2500円はとても安かった。






ところで、コンサートが終わってリーデンローズから出ていったとき、2時間後に同じ場所で台湾フィルが演奏することが気になった。台湾フィルと言えば台湾のトップオーケストラ。日本でいえばN響みたいな感じ。演奏曲目にはラフマニノフのピアノコンチェルト2番がある。指揮はメルクルだ。
本当は予定していなかったんだけど、値段を見たら当日券で3000円!安いじゃないか。心が動いた。
台湾といえば中国問題で頑張ってもらわなきゃいけないし、ここはひとつ応援しておくことにした。






観客の入りは広響と同程度だ。
1曲目の「ルスラントリュドミラ」。なんと爆速。こんなに速いのは初めて聞いた。
オケの編成が大きいのでリーデンローズがどうも響きすぎる感じで濁って聞こえてくるのが気になる。腕は一級品に思える。
2曲目、さて肝心のラフマニノフ。
簡単に言うと派手派手な演奏だった。テンポは早遅が極端に行われるし、ピアノのシュタットフェルト氏は結構個性的。逆にオケの音量が大きすぎてピアノの音が埋もれることも多かった。
野外ならちょうどいい感じだとは思うけど、このホールの場合はオケはやっぱりある程度抑えた方が綺麗に聞こえると思う。その点、広響は慣れている感じがする。
木管のフルート・オーボエが上手なことに反し、それ以外の木管がちょっと見劣りする感じ。ただ2部になるとメンバーチェンジがあったけどね。
シュタットフェルトのアンコールはヘンデルのリナルドから「私を泣かせてください」。なんか急に地味な曲。
オケのアンコールは「The Angel from Formosa」という台湾の曲。メルクルが日本語を少し話したのには驚いた。
結局こちらの演奏会は面白いという印象で終わり、3000円はなかなかリーズナブルだった。
それにしても台湾は資本主義を守り抜いてもらいたいと思う。

演奏会が終わりリーデンローズがライトアップされているというアナウンス。
福山市はこんなこともできるんだと驚いた。
ライトアップされたリーデンローズ