梅津美葉考


僕が梅津美葉を知ったのは1995年のこと
「ステレオ」誌のCD録音評で10点満点を獲得し、その年のクラシック部門の最優秀録音に選ばれたCDが彼女のデビューアルバム「シャコンヌ」だった。
当時からオーディオファンだった僕は何も考えずに即そのCDを購入した。
ストラディバリウスを弾いて録音されたそのヴァイオリンの音はとてもみずみずしく張りがあり暖かいものだった。そしてその音楽は最初から最後まで若々しさがあふれていた。

2年後の2枚目のCD「舞う〜ダンス・コレクション」はレコード会社がPHILIPSからBMGに変わっての発売だが、まったく違うイメージを僕に植えつけるものだった。スペイン音楽をその国の情緒たっぷりに弾く。音質は「シャコンヌ」とはまったく異なる鋭い音、すごいテンション。無意識のうちに音をわずかに♯させ緊張感を漂わす。
この「舞う」は今でも僕の一番好きなヴァイオリン小品CDのひとつだ。
いまでもお気に入りディスクとして車の中に常備してある。

3枚目のCD「Fruhlingスプリング・ソナタ」のベートーベン・ブラームスは王道をいく解釈。オーソドックスの中に若々しさがあふれるものだった。批評家たちもこのころになると彼女を絶賛。将来非常に有望なヴァイオリニストだと僕は確信した。

はじめて彼女の演奏を生で聞いたのは2000年3月。
ふくやま芸術文化ホール”リーデンローズ”(2003席)に彼女がやってきた。
演奏曲目はメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲
彼女はポートレートなどの写真から想像していたよりもずっと背が高くスリムで衣装栄えし、少女のイメージというよりは大人の女性のイメージを感じた記憶がある。
(考えてみればあたりまえなのだが)
残念ながら演奏は響きすぎるリーデンローズの音響のせいか席が後ろ過ぎたせいかオーケストラの音にややうもれてしまっていたためにあまりコメントできないが、ほとんどミス無く上手にこなしていたというのは間違いない。

それから彼女の演奏に触れる機会を僕は持っていない。
CDも4年近く発売されておらずとても残念に思っていたところだ。


彼女は1991年日本音楽コンクール第1位受賞。併せてレウカディア賞、黒柳賞、鷲見賞、 E・ナカミチ賞を受賞する。またその優れた演奏活動により鎌倉功労賞を授与されている。
1996年桐朋学園在学中に渡仏。パリ・エコールノルマル音楽院最上級演奏家ディプロマ過程及び 室内楽最上級演奏家ディプロマ過程を審査員全員一致の優秀賞を得て卒業。
という経歴の持ち主。
あえて言うなら海外のコンクールでの受賞経験がないというところあたりがネックだろうか。
現在は日本とパリを本拠地にして活躍しており、昨年デビュー10周年を迎えている。
それからの彼女の活躍はLE.Mなど室内楽中心のものというイメージを僕は持っている。

日本人ヴァイオリニストは昨今とてもレベルが高くなった。
世界的に見ても日本のレベルは有数だと思う。
五嶋みどり・諏訪内晶子をはじめ日本国内外で活躍しているヴァイオリニストはとても多い。
またJ-クラシックといわれるクラシックを広く広めようとする人たちやポップスとクラシックを融合させる人たちの台頭も著しい。高嶋ちさ子や川井郁子、幸田聡子などがそうである。
そして美貌のバイオリニストということでCDの販売が好調な奥村愛・小杉まりさ・吉田恭子・松井利世子など。(梅津美葉も美貌のバイオリニストですよね^^;)
そんななか世界コンクールでの優勝という経歴を求めて、実績がありながらコンクールに出場する人もいる。川久保賜紀などがそうである。
日本人女性ヴァイオリニストの主な経歴を見てみると
名前 海外での受賞歴
石川静 ヴィニャフスキー国際コンクール第2位
エリザベート王妃国際コンクール入賞 
漆原啓子 第8回ヴィニャフスキ国際コンクールに於いて、最年少18歳で日本人初の優勝と6つの副賞を受賞
川久保賜紀 第12回チャイコフスキー国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門最高位入賞
第6回サラサーテ国際ヴァイオリン・コンクール優勝
日下紗矢子 ミケランジェロ・アバド国際ヴァイオリンコンクールにて二位に入賞
小林美恵 ロン=ティボー国際コンクールヴァイオリン部門で日本人として初めて優勝
五嶋みどり ドロシー・B・チャンドラー・パフォーミング・アーツ賞
ナショナル・アーツ賞、アンコール賞、エヴェリー・フィッシャー賞
アメリカ音楽賞の年間器楽奏者賞 etc
庄司紗矢香 第46回パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで、史上最年少、及び日本人奏者として初めての優勝。
諏訪内晶子 1990年最年少でチャイコフスキー国際コンクール優勝。
千住真理子 第26回パガニーニ国際コンクールに最年少で入賞
竹澤恭子 インディアナポリス国際コンクールで優勝
天満敦子 ロン・ティボー国際コンクール特別銀賞を受賞
堀米ゆず子 エリザベート王妃国際コンクールで優勝
渡辺玲子 1984年ヴィオッティ、1986年パガニーニ両国際コンクールで最高位を受賞
これを見ると若い人たちがどんどん出てきていることがわかる。ヴァイオリニストは今過当競争なのだ。


こんななか、先日本屋に行ったときに写真週刊誌「FLASH」の見出しが目に入った。
「袋とじクラシック界騒然 美人バイオリニスト衝撃ヌード!!」
えぇぇぇぇぇっ!!なんだこりゃ!!
セクシー系なら川井郁子かぃ!!
あわててその袋とじの記事を探した。
するとその美人ヴァイオリニストこそ「梅津美葉」だったのだ。

袋とじの前後の部分はきれいな背中が写ってるだけだ。
おもわず袋とじの中身を覗こうとしていた自分がいた。
見るとやはり背中が写っている
ふむ・・・・
ヌードとしての過激さはまったく無い。
ヴァイオリンと一緒に映る姿は確かに芸術っぽい。ヴァイオリンの形は女性なのかと思ったりするし・・・
でも、あの清楚なイメージの梅津美葉が脱ぐとは!僕の中では他の若手バイオリニストとくらべても本当に想像し難い人だったので、まさに衝撃的だった。
確かにスタイルはいいし写真もきれい。でも僕の中のイメージは少女のままだったのだ。

彼女のHPを見てみると彼女は「アート」であることを強調し、「美の追求」を確かに感ずるところもある。
ただ、芸術的ヌードとなるとルノアールの裸婦やミケランジェロのビーナスの様なものを想像し、背中だけで終わってしまうとどうも消化不良だと思うのはわがままというものか・・・
実際彼女もそろそろ30才が近いに違いない。今のうちにきれいな姿を残しておきたいと思うはずだから、雑誌に発表されていないさらに過激な写真が必ず隠されていると僕はみた。(^^♪
ところで、この雑誌を見た人はどう思うのか
写真そのものの感想は別にして
彼女を知ってる人も知らない人もコンサートを見に行ってみようと思うに違いない。
そして忘れかけていた彼女の名前を思い出させるには十分すぎるインパクトだ。
動機はなんであれ、そのコンサートを聞いた人たちからクラシックの底辺が広がるかもしれないし
梅津美葉の知名度UPはもちろんのこと、できたらこれがきっかけで新しくCDでも発売されれば、地方にいる僕などでも彼女の演奏に少しでも触れることができるし、それが僕の一番の希望。
しばらく聞いていない彼女の音楽がどれだけ変わったのかが一番楽しみ。
彼女のセンスの良さはいくら海外コンクールの入賞経験が無くてもわかってるつもり。
理由や目的はどうあれ、これをきっかけに梅津美葉にブレイクしてほしいと願ってる人は僕だけじゃなくきっと大勢いるはずだ
がんばってほしいぜ!