2013 ヒメボタル撮影 天王八幡神社にて  

 2005年撮影




今年、3年ぶりに天王八幡神社に行きました。



1.敬遠していた天王八幡神社

私はヒメボタルの光がとても好きで、この時期、山を探して歩くことがあります。
カメラマンや観光客によって汚されていない、本当に自然のままのヒメボタルの生息地というのは貴重です。
ただし、中国地方ではゲンジボタルは良く見かけるので、川沿いを車で走らせているだけで新しい生息地を見つけることが比較的簡単に出来るのですが、ヒメボタルの場合はなかなかそう簡単にはいきません。
ヒメボタルは川沿に住んでいる蛍ではないので、探す際に場所の見当をつけることが難しいのです。
深夜、山中を車で移動しながらライト(懐中電灯)を消して真っ暗闇にして、そこに光っている蛍がいるかどうか確認する。その繰り返し。
そうしてやっと見つけたヒメボタル。・・・・こんなところにヒメが住んでいたんだと感動することが度々あります。
もしもヒメの住処を見つることができたなら、翌日その場所の植生を確認し、薄暗いうちからカメラを構えて蛍が飛ぶのをじっと待つ。
ひたすら待つ・・・・
そしてやっと飛んだ一匹のヒメボタル。その愛おしいことといったらありません。

一方、岡山県哲多町の天王八幡神社です
ここはヒメボタル(金ボタル)を保護するべく地元の方がボランティアで生息環境をずっと守ってきている有名な場所です。
事前にそこで蛍が飛び出したという情報がNETで流れていました。
多くの方がご存知の様にそこでは数千匹というヒメボタルが飛んでいるということでしょう。
そして何十人というカメラマンがお昼過ぎから三脚を設置して草むらに向かってレンズを向けて待機し、同じような構図で同じような写真ばかりを撮っているに違いありません。
他人と同じことをするのが嫌いな自分としては、多くの人と並んで似たような写真を撮っても全然面白くない。
せめて写真にする際に他人と違うなにか面白い特別なアイデアが浮かべばいいのですけどね・・・
なんといってもそれがここ数年天王八幡神社を敬遠していた最大の要因でした。

しかし、数年行っていないと逆になにか変っていないかが気になってきます。
そしてその素晴らしい圧倒的なヒメボタルのイルミネーションを久しぶりに自分の目で実際に見て感動したいという衝動にかられました。
なんといってもそれくらい素晴らしい光景ですから・・・
そのために今回は撮影についてのアイデアを数案考えました。


7月10日
会社を早退し、車を走らせて山の下のPに着いたのは18:00
この日も相変わらずの大人気で、到着したときには山の上の25台止められるPは当然満車。
山の下の駐車場も、もう一杯になりかけていました。

撮影機材を持ってヒーヒー言いながら山を登ること約10分。
やっとの思いで金ボタル発生場所の神社境内に着いてみると既に三脚50本。
噂を聞きつけた人たちが、遠くは関東からも多く駆けつけています。外国人の方も来られているようで金髪の男性が見えます。時折中国語も聞こえてきました。

ズラリと立ち並ぶその三脚たちの隙間にこちらも三脚を置かせてもらいます。
今回は2名での参戦なので、持込んだ三脚およびカメラは2セット。そして今回撮影するアイデアの一つとしてヒメボタルと共に星を撮る事を考えていました。
しかし人をフレームに入れずに星と蛍を撮る事はどう考えても不可能。
というわけであちこちにカメラを向けてみます。じゃあ思い切ってこれだけ並んだ人を撮ったら面白いんじゃないか・・・・
しかしずらりと人が並んだところを撮ったとして、それはそれで珍しい写真にはなるのでしょうが、それって報道写真にしかならないんじゃないか・・・・なんとなくそう思えてきました。

結局のところ一台の三脚は結局普通に森に向けてセット。もう一台の三脚は神社の鳥居に向けて構えました。
しかし30分ほど時間が過ぎてみると、人がどんどん増え、カメラとその鳥居との間にも三脚が立ち並んでしまいました。これじゃ予定通りの写真は全く撮れそうもありません。
しかしそれに代わるアイデアが思いつかない・・・・三脚を置くスペースもほとんど開いていない・・・
ということで、結局は2台ともいつもと同じで森に向けて、誰もが撮る様な構図でしかカメラを構えられませんでした。
超がっかり・・・




2.小原玲さんの主張

撮影の事前準備が終わり、Pまで戻ってタバコを吸おうとしたときに、ボランティアの方と話をする小原玲さん(カメラマン)を見かけました。
動物写真家として超有名な小原さんです。
せっかくなのでお話をしてみたいと思い、「ホタル撮影マニュアルというページをあげているはじめです」と、ご挨拶。その後いろいろお話をさせていただきました。
小原さんはテレビで見るのと同じで、とても穏やかな話し方をされる方で、またとても繊細な感性を持たれている方なんだろうというのが伝わってきました。

そんななか、小原さんから「最近はなんでも感度をたくさん上げて、いっぱいレイア合成をして、うじゃうじゃ蛍がいる写真が多すぎて大変困っているんです」と一言二言。
蛍撮影マニュアルというページにレイア合成のことを説明している私としては、その責任の一端を感じずにはおれません。


小原さんの主張は2点です。
 ・レイア合成して光跡を重ねすぎると、ホタルがどんなふうに飛んでいるのかわからなくなってしまう
 ・感度を高くして(ISO1600とかISO3200に)撮っているので、蛍の光が色飽和しているような写真が多い
ということでした。

確かに小原さんはご自身のブログでも書かれていますが、「蛍の儚さを撮る」「蛍がどんなところでどんな風に飛ぶかを撮る」ということを大事にされておられるようです。
実際にこの日も小原さんはISO400(F1.4)で撮るとおっしゃられていましたし、レイア合成もほどほどに抑えられるのだと思います。

しかし、私は一つ疑問に思ったのです。
なんで小原さんはホタルの光跡ウジャウジャの色飽和した写真が増えたことをそんなに嘆かないといけないんだろうと・・・・
単に一般の人の撮影の方向が間違っていることを嘆いておられるんでしょうか?
それなら小原さんの「蛍の儚さ」「蛍の場所・飛び方がわかる」写真の価値が逆に上がるというもんじゃないかと、老婆心ながら考えてしまいました。
もしかしたら、ウジャウジャの写真のほうが世間で評価される傾向にあることを嘆いておられるんでしょうか?
私も今回それ以上直接聞くことは出来ませんでした。





3.いろいろ言われたけど

小原さんといろいろお話しているうちにあっという間に背景の前撮りをしなきゃならない時間が来てしまいました。
人の数はどんどん増えて神社の境内には既に数百人はいるんじゃないかと思われます。
自分のすぐ横には金髪の外人さんも立っています。

背景の前撮りを終えて設定を変え、連写に設定したカメラのシャッターをロックしたのは一番ボタルが飛び始めた19:50頃。まだ薄明かりが残っていました。
この場所では撮影途中で設定を変えるとカメラの背面の明かりが付く恐れがあるので、撮影途中での小細工は出来ません。
最初から決め打ちの15秒のシャッタースピードで21:00撤収の最後まで撮影。最初の10数分間分の写真は背景が明るすぎたら捨てる覚悟です

感度は・・・・・
小原さんに言われて考えたのですが、結局自分はISO1600/F1.8(開放)にセッティングしました。
何故かというと、ISO1600/F1.4程度で色飽和するということ自体、自分で納得できなかったからです。
小原さんの言われる色飽和ってカメラの設定や現像の仕方が悪いために蛍の色が白くなってしまうことのことではないかと思うのです。
現実的にISO1600/F1.4でもちゃんと撮れば遠くの小さい光だって白くなることは全くありませんし、階調もちゃんと残ります。
    このへんの技術は企業秘密です(笑)
    そういえば、ヒメボタルの光跡は絶対に開放で撮ってくださいね。絞ると光跡が多角形になります
    EF50mmF1.8なんかで絞ったもんなら、光跡がきれいな五角形になりますよ(笑)



さて、空がどんどん暗くなって蛍の数がどんどん増えていきました。
20:20頃にはやがて隣に立っている人の姿さえも全く見えない真暗闇になります

見えているのは木々の隙間からわずかに覗く星々と圧倒的な数でチカチカ光るヒメボタルたちだけ
しかしこの光の数はなんでしょう
周囲360度がチカチカ光る数千匹のヒメボタルの眩い光で星さえかすんでしまい、他は何も見えないのです。
数百人いるはずの人々も声をひそめていて何もしゃべらずにいますし、まるで自分が違う世界に迷い込んでいるようです。
こんな感覚はまさに天王八幡神社でしか味わえません。本当に凄い光景です。

ヒメボタルはその一生のほとんどを土の中で過ごして羽化してから光って飛ぶのはわずかの間、雌ボタルには羽が生えていないので飛んでいるのはオスだけということです。
とにかく他のオスボタルに負けないように一生懸命光って交尾の相手を見つけているというのが現実。
これは人に言い換えてみると超大人数の酒池肉林の乱交パーティー・・・いや集団見合いということになるでしょうかね。

私もこれまでヒメボタルをあちこちで撮ってきましたが、これほどの集団見合いはここでしかお目にかかることはできません。
この光景を守り続けておられるボランティアの方々の努力にはまさに感謝するばかりです。


しかし一方でこの光景を写真で伝えるというのはとてもできるものではありません。現地に行ったものだけがわかる光景と感動がそこにはあります。
どういった形でこの感動を写真にして伝えるのがよいのか・・・


小原さんはブログで「どんな場所でどういった風に飛んでいるか」を伝えたいとおっしゃっています。
実際には最初数匹だったころは一匹の蛍がどんなふうに飛んでいるか光跡を追えるのですが、途中からは蛍が多すぎて、今見ている蛍がどっちに飛んでいるのかさえ分からなってしまいます。
それほどの光の密集度。
「蛍がどんな風に飛んでいるかを撮る」というのはこの特殊な場所では現実と少し違う気がします。


小原さんは「儚さを伝えたい」ともおっしゃっています。
小原さんの蛍を守るという姿勢は写真好きとしてとても勉強になり賛同するところが多いのですが、私は残念ながらこの場所では蛍の儚さを感じることができませんでした。

実際の光景は真っ暗な中で周囲全部がチカチカしていて圧倒的な迫力さえ感じます。
プラネタリウムの中にいて星があちこちで不規則に瞬き続けている感じ
前述のようにどちらかというと自分としては酒池肉林の集団見合いの中にいる印象の方が強く感じられました。
ここのホタルは山中でみつけた一匹のヒメボタルと全く印象が異なります。





自分としては本当は魚眼レンズで撮りたいと思いましたが、レンズが暗いので持ち込んでいません。
結局、広角レンズ(28mmF1.8)でISO1600/F1.8/15secということになりました。
蛍の量も今回は感じるままにたくさん重ね、40分相当をレイヤ合成しています。





ホワイトバランスは背景・光跡とも太陽光そのままにしています
太陽光のままでも月や霧等が出ると背景が青くなることがありますが、この日は太陽光でこんな感じ
故意に青くするのが流行していますが、あれってどうなんでしょうね・・・・心の風景ということでしょうか


実際ヒメボタルが光っている時間帯は背景は真っ暗で何も見えないので、この背景は明るすぎるのかもしれません
それこそ心の風景です(笑)

どちらにせよ、今回はなにか一工夫したかったのですけど、結局は変わり映えのしない写真になってしまいやや後悔しています・・・
写真って難しい!!

天王八幡神社でなんとかオリジナリティーは出せないもんでしょうかねぇ・・・・