高木凛々子 ヴァイオリンリサイタルを聴く (2020/9)
 

   


2020年9月4日、リーデンローズ小ホールにて高木凛々子のリサイタルが開催された。

彼女のヴァイオリンを聞くのはもう6回目。
そしてその1回目に聞いたコンサートがこのリーデンローズの小ホールだった。
まだ19歳の彼女は音がしっかりしていてテクニックは抜群、しかしまだまだ粗削りで音楽というよりもテクニックを披露することが前面に出ているという印象だった。
しかしその時に演奏されたバッハのシャコンヌにはこのホールの音響と相まって私は鳥肌が立つほど感動し、彼女に大器の片鱗を感じたことを今でもはっきりと覚えている。
4年前にも演奏したこのホールで今回はどんな演奏を聞かせてくれるのだろう。


当日は開演15分前に現地に到着。
当日券を3000円で購入し、横を見るとサイン付きCDの販売がされていた。
実は先日Amazonで同じCDを購入していたのだが、今回はサイン付きということでまた買うかどうするか悩む。その場で悩んでいた際、販売されていたおじさんに「どちらかのお店の方ですか?」と聞いてみたら「いえいえ、身内の者です」との返答。ん!!そういえばこのおじさん見たことがある!!「もしかしてお父さんですか?」「ええ・・・」と!!! 驚いた。
こりゃ〜買う以外に選択肢はない。



なんと、うん十年生きてきて自分にとって初めて同じアルバムを二枚買うことになった。
そうしらた今度はお母さんが隣にやってきた。
「今回は共演はされないのですか?」と聞く。「今回はありません」だそうだ。
家族での全面バックアップということか
なんかとても微笑ましく感じた。
それにしてもサインがずいぶんサインらしくなったなぁ・・・(汗)

この”Brillante”という8月に発売されたばかりのCDだが、彼女のデビューCDである。
(Brillanteとは音楽用語で"輝かしく華やかに"の意)
自分の予想よりも随分早いデビューでちょっと驚いたけれど、現在の実力を考えてみるともうおかしくないのかもしれない。
CDを聞いた感想としては、全体としてはレベルの高い音のきれいな演奏だけど、最初のヴィエニャフスキーの変奏曲と最後のアザラシヴィリのノクターンの演奏に力点があって、エルガーの愛の挨拶やラフマニノフのヴォカリーズなどのスローな曲は間奏曲的な扱いに聞こえたので、もう少ししっとりと聴かせて欲しいと感じたのが正直なところ。
そして、今回のセトリにもそのヴィエニャフスキーが含まれている。
さてどんな演奏会になるか楽しみだ・・・



セットリスト

 モーツアルト:バイオリンソナタ変ロ長調K.V378
 J.S.バッハ :無伴奏バイオリン・パルティータ第2番から”シャコンヌ”
    休憩
 ドヴォルザーク:4つのロマンティックな商品Op.75よりカヴァティーナ
 ボルディーニ/クライスラー:踊る人形
 チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォハ長調作品34
 ショパン/ミルシュタイン:ノクターン第20番遺作嬰ハ短調KK.Wa-16
 ヴィエニャフスキ:創作主題による変奏曲作品15

 (アンコール)
 マスネ:タイスの瞑想曲
 パガニーニ:24のカプリース第9番
 アザラシヴィリ:ノクターン

ピアノ伴奏:高橋元子



全席自由なので、いい席が取れるかどうか心配したが、結局いつものようにやや右側の前の席をゲット。彼女の登場を待つ。
ほどなく時間となって、彼女はターコイズブルーのドレスで登場してきた。

すぐに演奏が始まる。
1曲目のモーツアルトのヴァイオリンソナタは2018年の10月に県民文化センターで18番の演奏を聞いていたので今回でモーツアルトは2回目になる。正直に言ってその時は期待外れ。重いしバランスもピアノ寄り。Youtubeでの演奏を聴いていても自分のイメージするモーツアルトとはちょっと違うなと感じていたので実はあまり期待していなかったのだ。
ところが今回のモーツアルトはというと、想像していたよりはずっと良かった。ピアノとのバランスも良いし、前回よりも軽快に聞こえた。
2曲目のバッハのシャコンヌは4年前にこのホールで彼女の演奏を聴いて大感動した曲だったが、今回も実に素晴らしかった。
音に包まれる感覚は本当にヨーロッパの教会で聞いているかのようで、このホールの響きは凄いというか彼女が凄く響かせているというか・・・とにかくこのリーデンローズ小ホールに一番似合う曲だと思うし、今回も鳥肌が立った。
また、ストラディバリウスの音の方だが、1月に県民文化センターで初めて聞いた時と比べると確実にいい音で鳴っている。黒沢楽器から貸与された1702年製の「Load Borwick」というストラドだということだが、今回は嫌味なところが全くなく、以前とは見違える(聞き違える)ほど落ち着いていてそれでいて華やかな音がしていた。彼女が楽器になじんできたというのか楽器が彼女になじんできたというのか、かなりこの楽器を弾きこなせているという印象を持った。

休憩の後、第二部が始まる。
彼女は白地にバラの花柄の衣装で登場。首から胸にかけてラメが散りばめられている。
これは福山(バラの街)を意識してなのか、とても上品に見える。
YouTubeで見たハロウィンの悪魔の衣装もとても素敵だが、こちらもなかなか良い。

二部で一番良かったのはなんといってもヴィエニャフスキーだった。
完璧ともいえる演奏。CDで聞くよりもずっと感動的。
彼女はこの曲を小学6年生の時から弾いているということで、それはもう流石としか言いようがない超一流の演奏だった。

パンフレットの裏側に「巨匠アッカルドが認める若き実力者。若手ヴァイオリニストのトップに躍り出たRIRIKOが福山にやって来る!」と書いてあった。
いつ彼女が若手のトップに躍り出たのかちょっと疑問には思ったが、少なくとも彼女がここ数年で一流の仲間入りを果たしたことに違いないと思う。そしていずれ世界中からオファーが来るような超一流のヴァイオリニストになってもらいたいと考えずにはいられない。






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雑記

日本の若手バイオリニストのレベルは高くて競争はとても激しい。
以前書いた辻彩菜なんか特にすごいし、芸大の後輩にも多くの有望新人がいる。
そういった中、YouTubeで演奏を公開するなど個人でアピールして各々の方向性を出している人もいる。ビジュアルを売りにして宮本笑里のように日本のテレビなどへの活躍を目指している女性ヴァイオリニストも多くいるのではないかと思う。
高木凛々子もYouTubeなどのメディアを通してクラシックの演奏をたくさん公開している。
それはかなりおびただしい量だが、それが良いのかどうか・・・
自分としてはいろいろな彼女が目と耳で見られるというのはありがたいのだけど・・・
ただ、YouTubeに同様に演奏を配信している東京芸大の後輩美人ヴァイオリニストの高松亜衣(明らかに腕は高木さんの方が上だと思うけど)のチャンネル登録数と比べると高木凛々子のチャンネル登録数は10分の1しかないというのが残念でとても寂しい。

私は乃木坂46が好きだけれど彼女たちのCDは1枚も持っていない。でもMVは見たいしコンサートのDVDは欲しいと思う。車で聞くときもMVやライブのDVDを持ち込んで音だけ聞くということになる。ビジュアルがあってキャラクターが前提であっての音楽だ。
庄司紗矢香の演奏も多くがYouTubeにアップされている。ただこれは本人の発信したものではなくスポンサー側が発信したもののようだ。
一方CDで純然たる音楽を聴くのであれば私は辻彩菜のCDを聞きたくなる。彼女の演奏はいつも研ぎ澄まされているというか気迫を感じるし、その音楽がストレートに心を打つ。(高木さんには申し訳ないがこの部分は辻さんの方が優れていると思う)
彼女がもし純然たるクラシックのCDを大量に売りたいのであれば、どうしてもそれなりの評価が必要だろう。その評価のひとつはそれまでの実績で、ひとつはストラドを弾く人ということでもある。日本にストラドが何本あるのか知らないが、少なくともそれを弾くことを許された貴重な人ということだけでも評価されていることになるだろう。それはしっかりと宣伝していくべきだ。

さて、自分でYouTubeに演奏を公開することによって発売するCDの価値が下がってしまわないか?・・・

これはマイナスでもありプラスでもある。
当然名前が売れなければCDも売れないわけだから、そのためにSNS等を利用することは有効であることは間違いない。特にモデルもやっている美人バイオリニストなのだから、露出が増えれば増えるほどメディアに出演する機会も増えるだろう。

実は私も同じような悩みを持っている。(彼女と比べるととても小さな話なのだが)
昨年”「月虹」夜の虹と日本の滝30”という写真集を発売した。
しかし私も月虹自体も知名度が無いので写真集の存在自体世間に知ってもらえない。
月虹の写真はとても貴重だと思う。だから今は自分のHPに写真も動画も一切公開はしていない。
公開すると写真集の価値が下がると考えたからだ。
しかし販売量を増やそうとするなら、少しでも露出を増やしていく必要がある。
そこで出版社に相談したところ、結局YouTubeに公開する方が販売には寄与するだろうという連絡が先日来たところだった。

状況が同じじゃないので自分の話と彼女の話を一緒にしてはいけないだろうけれど、
今後彼女がどちらを向いて進んでいくのかが心配、そしてとても楽しみでもある。






高木凛々子ヴァイオリンリサイタル(2016/5)を聴く