高木凛々子、ヴァイオリンコンサートを聴く 
 

     


2018年10月、広島県県民文化センターふくやまにて第49回福山音楽祭がスタート。
同11/11、高木凛々子のヴァイオリンコンサートが開催されることになった。

前回、高木凛々子を聴くことが出来たのは2月の府中市でのパガニーニのヴァイオリンコンチェルトだから、9ヶ月ぶり。その前は2016年5月の福山リーデンローズ小ホールでのリサイタルだから、福山では2年半ぶりということになる。

2年半前のコンサートは彼女を好きになるきっかけになるものだった。まだまだ粗削りな一面もあったけれど、ホールを響かせる腕前は一級品。バッハのシャコンヌには鳥肌が立った。そして半年前のパガニーニは彼女の成長を感じた。
今回は3回目、自分は彼女のファンではあるけれど、彼女には世界をまたにかける一流の音楽家に育ってもらいたい。今回はファンであるという私情を抜きにして冷静に、そしてなるべく客観的に少し厳しめに聞いてみたいと思っていた。


県民文化センターには20分前に到着。入口で当日券(3000円、全席自由)を購入
以前のリーデンローズ小ホールでのコンサートは1500円だったから価格は2倍にグレードアップ(?)
リーデンローズの小ホールが312席で県民文化センターが530席だから会場の使用料からそうなったのか・・・???
しかしながらホール内に入ってみるとまだまだ空席がたくさん。
結局前から2列目をゲットすることが出来た。

待ち時間にパンフレットを読む。
彼女のプロフィール欄に関ジャニ∞のヴァイオリン王のことが書かれていてないことに感動(^^; これからはそんな肩書はきっと邪魔になる。ちょっと進歩したかも・・・

本日のセットリストには弦楽四重奏の4曲が含まれている。
高木凛々子以外の3名はいずれも読売日本交響楽団の人で、コントラバスの神辺出身の樋口誠氏、ヴィオラはお父さんである高木敏行氏。そして第2ヴァイオリンが井上雅美氏、かなりの美人。さらにヨーロッパのオケでコンミスを務めるなど、なかなかの経歴を持つ人だ。ところがこの井上さんが彼女のお母さんであることは後から知って驚くことになる。


プログラム
 ・モーツアルト:ヴァイオリンソナタ第18番ト短調K.301
 ・クライスラー:前奏曲とアレグロ
 ・クライスラー:中国の太鼓
 ・ヴィエニャフスキー:創作主題による華麗なる変奏曲
  休憩
 <弦楽四重奏>・シュランメル:ウィーンはウィーン
        ・ロンビ:シャンパンギャロップ
        ・J・シュトラウスU:南国のバラ(演奏時順序入替)
        ・J・シュトラウスU:アンネン・ポルカ(演奏時順序入替)
 ・パガニーニ:カプリース第24番(ヴァイオリンソロ)
 ・サラサーテ:チゴイネルワイゼン



時間が来て、真っ赤なドレスに身を包んだ高木凛々子が登場
顔が真っ白で血色が悪く感じる。元々細いし倒れるんじゃないかと思うくらいだ
以前会った時も色が白いと感じたけれど、顔色が悪いと感じたのは今回だけ
化粧のやり方に問題があるのかもしれないが、ちょっと気にかかる。

モーツアルトのソナタが始まった
ピアノ伴奏は現在福山市立大学で講師をされている高橋元子さん
高木凛々子の演奏は全く冴えなくて全く前に出てこない。高橋さんなかなかお上手でむしろピアノが主役。ヴァイオリンの音がピアノに負けている。
これヴァイオリンの伴奏つきピアノソナタだったかな・・・(昔のヴァイオリンソナタはそうだったし・・・)

2曲目のクライスラーになってからやっと調子が出てきたようで、はじめて彼女の本領を感じた。2年前に比べるとずっと良くなった気がする。
その時、是非広響とリーデンロースの大ホールで一度コンチェルトを共演してほしいものだと思った。
ヴィエニャフスキーも素晴らしい演奏。後から聞くと彼女は小学校6年生の時にもうこの曲を弾いていたのだそうだ。驚くほかない!


休憩の後、弦楽四重奏が始まる
曲が始まる前に樋口氏からメンバーの紹介
その時に井上雅美氏が高木凛々子の母親だったことを知って驚いた。
井上さんとの距離は10m程度だけれど、とてもそんなお歳には見えなかったし、肌もきれいでどう見ても高木凛々子のお姉さんくらいにしか見えない。そして凄い美人。
苗字は旧姓のまま継続されていることも度々あるので驚かないが・・・
この母親ありきでこの娘あり。美人は母親から受け継いだものなのだろう

良く見ると確かに似ている・・・

弦楽四重奏で演奏される4曲はウイーンの楽しい曲の連続で、ここまでのコンサートの雰囲気とはまるで違い、自然と笑みがこぼれてくる。シャンパンギャロップでは福山音楽祭実行委員長の森山勝利氏の飛び入りがあったりして楽しく和気藹々の進行となった。
高木凛々子はファーストヴァイオリンなので全体をリードする形で曲は進むが、ちょっと控えめなような印象を受ける。お父さんとお母さんの音を聞きすぎだったりするのかも


次はソロに戻ってパガニーニのカプリース24番
一人で弾くこの曲はとても素晴らしい。今回のコンサートで一番の出来。ホール全体にヴァイオリンの音が響き渡って音楽に身体全体が包まれている感じがして本当に心地よかった。
以前のコンサートで彼女のバッハのシャコンヌを聴いて同じような気持ちになったけれど、あの時の演奏も素晴らしかった。無伴奏の曲の方が彼女にあっているのか、伴奏がない方が入りこめて自由に弾けるのか・・・それともこの曲が好きなのか・・・

一方で最後のチゴイネルワイゼンは半分予想をしていたことではあるけれど、上手に弾けましたという演奏だった。テクニックは上手だけど緊張感が伝わってくるものがない。
そもそも若い女性がこの曲を弾くのには無理があるのか、諏訪内晶子が以前そうだったように、言うなれば石川さゆりの「天城越え」をNHKの歌のお姉さんが歌っている感じとでも言おうか。確かに歌は上手なんだけど・・・
この曲が彼女はあまり好きではないのかもしれないという気もする。まぁ純粋無垢な若い女性にジプシーのドロドロした感情を表現するのに無理があるということなんだろう
曲を弾くときは、まずその曲を好きになってもらいたいものだ・・・

アンコールはパラディスのシチリアーノ。この曲もだけれど、唄う曲はもっとダイナミックレンジを広くしたり、伸ばすところは思い切り伸ばしたり、テンポを揺らしたりしても良いのではないかと思った。とくにPPがほとんど無いからすっと抜けてしまう

全体の印象としては感動に正直ムラがあるコンサートだった。鳥肌が立つ演奏から、心にとどまらずに何気に抜けて行く演奏まで

そんなことを思ってたときにサプライズ発表
なんと来年広響との共演が決まったとのこと
さっきそう思ってたばかりなのに凄い偶然。素晴らしいじゃないか
場所や曲目の発表は無かったけれど、きっとリーデンローズでの広響福山定期でコンチェルトを演奏してくれるはず
このチャンスを生かしていい演奏をして、彼女自身の評価をたくさん上げてもらいたいものだ。



コンサートが終わってロビーに出てきた彼女と両親は多くの人に囲まれ、いつまでも語り合って写真を取り合っていてみんな笑顔でいっぱいだった。彼女はお父さんお母さんをパパママと呼んでいた。顔の血色も少し良くなったようだった。

 



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追記

私はBS日テレの「恋するクラシック」を毎週録画して見ているが、その番組に出演したゲストで特に印象に残っている若い演奏家が二人いる。
小林愛美(P)と辻彩菜(Vn)だ
その二人の演奏家はもちろんもうすでにデビューもしているんだけれど、その番組中の一曲の演奏をに心を打たれ、この二人はこれからさらに有名になるに違いないと思った。

特に辻彩菜はヴァイオリンで高木凛々子より年下の東京音大の2年生。
ライバル心もあるのではないかと思う。
辻彩菜は2016年モントリオール国際コンクールで一位。今年は出光音楽賞を受賞、そして今度スイスロマンドとの共演が決まったところ。
経歴も立派なのだけれど、それより自分はまずその番組で彼女が演奏したサンサーンスのロンドカプリチオーソが凄いと思った。胸を打つ演奏だったというべきか。

このコンサートが始まる前に、実は辻彩菜と高木凛々子を比べてた時の違いはどこなんだとずっと考えていたのだけれど、一般聴衆としてあえて違いをひとつ感じるとすれば、それは歌うということ、感情を伝えるということに対して辻彩菜が少しだけ上手いということではないかというのが今の結論。もちろん自分のような素人がちゃんとしたアドバイスが出来るはずもないのだが・・・
いつかは「恋するクラシック」で雛壇側ではなくゲストとして呼ばれる側になってもらいたい。
そのための手段が大きなコンクールや大きなコンサートでの演奏が認められることでもある。日々手を抜かずに頑張ってもらいたいものだ。少なくともご両親から授かったルックスというアドパンテージが彼女にはあるので、きっかけさえあれば大ブレイクする要素は大きいと思う。


後日、彼女の動画を見た
そんな中に録音された伴奏に合わせて弾いているのがあったけれど、あれは良くないんじゃないか。
ソロヴァイオリニストはもっと自分勝手に弾かないと・・・
我儘くらいで丁度いいじゃないか。





高木凛々子、2020福山ニューイヤーコンサートを聴く