高木凛々子、パガニーニヴァイオリン協奏曲を聴く 
 

     


2018年2月25日、広島県府中市文化センターにて「春まちコンサート2018〜華やかなヴァイオリンの音に誘われて〜」
というイベントが開催された。

●客員コンサートミストレス:甲田有
●指揮:槙本啓志
●管弦楽:府中シティオーケストラ
【ゲスト】高木凜々子

《プログラム》
♪ボロディン:交響詩「中央アジアの草原にて」
♪パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品6/独奏 高木凜々子
♪チャイコフスキー:交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

という内容
そしてその二曲目のパガニーニのヴァイオリン協奏曲のヴァイオリン独奏が高木凛々子となっている。



このコンサートを知ったのは2か月前。
奇しくもリーデンローズに広島交響楽団の定期演奏会のチケットを買いに行ったときにもらったそのパンフレットに印刷されていた彼女の写真を見て驚いたのだった。


「春まちコンサート」というのは府中シティーオーケストラが毎年春に行っている定期演奏会のことなのだが、まずはその説明をしないといけないだろう

府中シティーオーケストラというのは府中市にある市民アマチュアオーケストラで、前身は府中市音楽同好会。
その後FMCオーケストラという名を経て現在の府中シティーオーケストラという名に至っている。
基本的には府中高校のOB・OGで構成されているオーケストラだ。
月に二度というスケジュールで練習して一年に一度の定期演奏会に臨んでいると聞いた。

しかしそもそも広島県府中市というのは私の住む福山市の北方の隣に位置する人口わずか4万人の小さな都市である。
福山市の十分の一以下の人口の小さな街の市民オーケストラなので、その演奏レベルはそれなりの超アマチュアレベルだと考えるのがあたりまえ。
ところがただこの府中シティーオーケストラの前身であるFMCオーケストラの時代に私は一度演奏を聞いて驚いたことがある。
その時の演奏は10倍の人が住む福山市のシティーオーケストラよりもレベルの高いものだったのだ。
おそらく府中高校出身のOB・OGにそれなりの技術・指導力のある方が多くいて、積極的に活動しているからに違いないと考えられた。

そのころからはかなりの年月が経っているので現在の状況は良くわからないが
NETで調べてみたところでは、コンミスの甲田さんおよび姉妹の方は現在も福山市で音楽教室を開いておられ、
なんとわが母校の管弦楽部のコーチもしているとのことで(杠先生懐かしい・・・)親近感がわく。
というわけで、おそらく市民オーケストラとしてはそこそこのレベルを保った良い演奏を聞かせてくれるのではないかと期待した。




当日、開演30分前に到着。500円を払って全席自由の当日券を購入。
会場を覗いてみたところ、もうすでにかなりの席が埋まっている。
府中市文化センターは1000席なので最終的には800人近くは行きそうだ。
つい一週間前に福山市のリーデンローズ大ホール(2001席)であった広響の定期演奏会はかなり隙間が空いていたので、それと比べてもあまり変わらない人数が入っているのではないかと感じられた。
福山市と府中市では人口の点以外にも遠方の人にとってアクセスの容易さという点でかなりの差がある。
ということは、演奏曲目の問題とチケット代の差を度外視すると、
府中シティーオーケストラ&高木凛々子(Vn)という組み合わせは広響&児玉桃(P)という組合せよりも人気があるというということが言えるのか・・・・(汗)
まぁ500円と4000円のコンサートを同列で比べてはいけないが・・・


さて、中央やや右側の好位置の席をゲットし、開演を待つ。
待っている間に指揮の槙本氏が出てきて時間つぶしにと曲目の解説。
しかし曲の解釈はその人の主観もあるし、はっきりいって全く興味がそそられない話だったので、次回からこんな時は、曲に関するならその曲のエピソード。できればメンバーや練習時の生の話をお聞きしたいものだ。


開演時間となり、メンバーが入場して来て、1曲目のボロディンが演奏される。
腕ならしの選曲としてはなかなかいい感じ。
演奏はやや硬いものの破綻無く耳に心地よい。
聞くに堪えない演奏だったらどうしようかと思ってたけれど、市民オーケストラとしては充分。
正直なところちょっと安心した。

二曲目になり高木凛々子が登場
彼女はピンクのしかし落ち着いたドレスで以前と比べるとすこし大人びた印象。
2年前にリーデンローズで見た頃はまだ十代だったはずなので、それを思うと当然か。
今は東京芸大の3年生。成長期真盛りかも・・・



さてパガニーニのヴァイオリン協奏曲の演奏が始まった。
端正な長い前奏のあと、彼女の弓がやっと振り下ろされる。
そしてその最初の10秒間、私の腕に鳥肌が立った。
おそらくその最初の瞬間に彼女は会場の聴衆全員の心をつかんでしまったのではないかと思う。
彼女の音は美しくしっかり響いていて、まさにコンサートヴァイオリニストの音。
その音だけで聴衆は魅了されてしまう。このヴァイオリンはいったいなんという名の楽器なのだろうか

パガニーニの協奏曲はもともとがヴァイオリニスト自身が自分が演奏するために書いた曲だから、主役はいつもソリストだ。
超絶技巧も随所にあらわれ、倍音がずっと連続するフレーズや左手ピチカートなども出てくるが
彼女はそれらをなんなく弾きこなし、ピッチも狂わない。
リーデンローズのリサイタルでも感じたことではあるが、彼女の技巧は本当に確かで、パガニーニは本当に彼女に似合う曲だと思う。
そして二年前にパガニーニを聞いたときほど技巧にばかり傾倒している印象は薄れ、あくまで曲の良さを素直に表現し、伸び伸びと曲に乗って演奏しているという表現がふさわしい。
すこし大人になったのかな

曲のテンポも彼女が支配しているものの、府中シティーオーケストラはとてもうまくついて行っている
オケはかなりこの曲練習したんじゃないかな・・・とても上手だと感じた。
曲が終わって鳴りやまない拍手が続く
これをワンコインで聞けるとはCP抜群のコンサートだ。


彼女は今年年末にブラームスのヴァイオリンコンチェルトを弾くと聞いたが、ブラームスはパガニーニとは正反対の性格の曲なので、彼女にとってとても勉強になるに違いない。
難曲ではあるが、技術はもう確かなのだから、あとはどう表現できるかだけだと思う。
ブラームスも是非聞いてみたいものだ。

しかしその前に海外のコンクールにでるとか・・・
課題曲が何になるのかはわからないが、是非大きなコンクールで一度賞を取って帰ってきて欲しいものだ。
今日の調子なら必ず良い結果が期待できると感じる。



休憩時間をはさみ、メインのチャイコフスキーの4番の演奏
一楽章、冒頭のトランペットのファンファーレが終わるとストリングスの合奏が静かに始まる。
おや??・・・・ここは強い緊張したPで始まるところだろう・・・
ここでいきなりの違和感を感じてしまう。
確かにこの曲は難曲だ。おそらくこの曲の練習までしっかり時間が取れなかったのかも
そんなことを考えつつ聞いていると、3楽章のピチカートのところではなんかとても揃っていて聞いていて心地よくなってきた。
4楽章は勢いに任せてアゲアゲで快調!
最後は気持ちよく聞き終えることが出来た。
府中シティーオーケストラもなかなかやる。


それにしても一つの疑問。
どうしてこの小さな街の市民オーケストラの定期演奏会に不釣り合いとも思える高木凛々子がわざわざ来てくれたのかということ。
いち高木凛々子ファンとしては願っても無いありがたい話なのだが、
オファーもたくさんあってコンクールも間近でとても忙しいであろう東京在住の大学生の彼女が、というのに少し違和感を感じた
もちろん彼女がまだクラシック演奏家としての知名度が低いということが前提としてあるのかもしれないが、おそらくなんといってもお父さんとオケの世話役とのつながりがあるに違いない。
高木凛々子のお父さんは福山出身。そして以前有ったリーデンローズでのリサイタルはその関係で福山で開催されたものだった。
こういった人のつながりというのはとても重要でそしてありがたいものだ。
彼女の田舎が福山であることに感謝!!


  

コンサートの終了後に彼女にサインをねだってみた
今のこの素直な漢字がそのうちに崩した字体になって、いつかはこの素朴なサインもプレミアが付くに違いない・・・なんて考えたりして・・・(汗)

握手した彼女のその手はとても小さくて驚くほど
顔もとても小さくて並んだ自分の顔がずいぶん大きく見えた。
相変わらずちょっと痩せすぎじゃないかと思うので、病気にならないようにモリモリ食べるものは食べて、元気に次のコンクールには臨んでもらいたいものだ。
ガンバレ!




高木凛々子ヴァイオリンリサイタルを聴く