諏訪内晶子考


1990年、偶然旅先のホテルでつけたテレビ。
そこであどけない表情をした少女がヴァイオリンを弾いていた。
諏訪内晶子。チャイコフスキー国際コンクールヴァイオリン部門優勝!
「日本人初」というばかりか「史上最年少」というおまけまでついていた。
その演奏は無類のテクニックの上手さに加え、実にのびのびしていて気持ちのいいものだった。
そしてその後にあった優勝者記念コンサートでのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の演奏は本選での演奏よりもさらに素晴らしかった。
こんなに可愛い女の子がこんなに素晴らしい演奏をするなんて・・・・
その時から諏訪内晶子という女性は自分にとってアイドル的存在となり、20年以上たった今でもそれは変わらない。

彼女はコンクールの優勝後、すぐに演奏活動に入るのではなく数年間ジュリアード音楽院・コロンビア大学・国立ベルリン芸術大学で研鑽を積んでから、その後に日本でも本格的に演奏活動をするようになった。数多くの著名な指揮者・オケとの共演も果たしていまや日本を代表するヴァイオリニストの一人である。
僕はその間CDを集めコレクションを増やすと同時に、中国地方に彼女が来るときには何度かコンサートにも足を運んだ。


彼女のヴァイオリンは日本音楽財団から長期貸与されているストラディヴァリウス「ドルフィン」
数あるストラドの中でも評価の高い貴重なもので、世界3大ストラディヴァリウスのひとつなのだそうだ。かの有名なハイフェッツも以前使用していたことがある。
そしてこのヴァイオリンから奏でられる音はとても芳醇で伸びやかでとても美しい。
彼女の演奏はその音質からかいつも明るくて美しい。
CDで聞くツィゴイネルワイゼンなどはこんなに明るくていいのかと思うほど
そしてそのテクニックはいつも完璧で難曲を軽々と弾きこなしてしまう。

  


2012年1月19日。
岡山オリエント美術館で行われたギャラリーコンサート。
諏訪内晶子チャリティーリサイタル。食事付きで観客は僅か50組。
久しぶりに直接彼女を近くで見ることができた。

 

彼女は黒のシックなドレスで登場
なんと匂い立つような美しい大人の女性になったもんだろうか。とても色っぽい。
あれから20年以上なんだからいつまでも少女じゃないのはあたりまえだけどね^^
流行の言葉ではアラフォーということになるんだろうが、とてもそんな風には思えない。
スタイルも変わらず、いや昔よりも良くなっている気がする。

さて演奏曲目は
 1.セルゲイ・プロコフィエフ 「ヴァイオリンとピアノのための5つのメロディー」
 2.リヒャルト・シュトラウス 「ヴァイオリンソナタ 変ホ長調」
 3.シュール・マスネ     「ダイスの瞑想曲」
 4.ヘラ・バルトーク     「ルーマニア民族舞曲集」


諏訪内晶子の演奏は以前と変わらずミスの無い完璧なもので、教科書のようだった。
しかし、良く鳴ってきれいで完璧だけど、反対に面白くない。
中でもバルトークは良かったが、彼女の演奏に小品が向いてないのか
もっと感情移入してもいいんじゃないだろうか
もっとダイナミックレンジを広げてもいいんじゃないだろうか
もっとルバートを効かせてもいいんじゃないだろうか
もっとオーバーアクションでもいいんじゃないだろうか
ついそう考えてしまう
いつまでも見て聴いていたいお気に入りの諏訪内晶子なだけに、期待も大きくなるのは仕方ないところ


アンコールは矢代秋雄の「ヴァイオリンとピアノのためのセレナーデ」
これもまた綺麗な演奏だった