カメラ"連写能力"の落とし穴  (メーカー公表値のマヤカシ)




1.連続撮影速度から考えられる「インターバル時間」

デジタル一眼レフカメラのカタログを見ると連写能力なるものが記載されている。
たとえばCanonとNikonを例にすれば

機種 連続撮影速度
EOS KISS F 最高 約3コマ/秒
EOS KISS X2 最高 約3.5コマ/秒
EOS 40D 最高 約6.5コマ/秒
EOS 5D 最高 約3コマ/秒
EOS-1D MarkV 最高 約10コマ/秒
EOS-1Ds MarkV 最高 約5コマ/秒
D40 最高 約2.5コマ/秒
D60 最高 約3コマ/秒
D80 最高 約3コマ/秒
D300 最高 約6コマ/秒
D700 最高 約8コマ/秒
D3 最高 約11コマ/秒

となっている。
一般の人はこれを見て40Dは毎秒6.5枚撮れるからKissなんかよりもずいぶん速いと思うだろう。
実際僕もそう思っていた。
でも、これには重要な落とし穴があることに気づいたのだ。
それは「最高」という文字にある

シャッターが閉じて次に開くまでの時間をインターバル時間という。
EOS-1D MarkVの場合を想定すると最高10コマ/秒であるから、一番有利なことを考えるとシャッタースピードが限りなく速く数千分の1秒などの場合だから、インターバル時間はMAXでも0.1秒ということになるだろう。

ここでもしもシャッタースピードが0.1秒で10枚連写したら
 シャッタースピード0.1秒×10回 + インターバル時間0.1秒×10回 で 2秒 かかることになり

もしもシャッタースピードが1秒で10枚連写したら
 シャッタースピード1秒×10回 + インターバル時間0.1秒×10回 で 11秒 

そしてシャッタースピードが10秒で10枚連写したら
 シャッタースピード10秒×10回 + インターバル時間0.1秒×10回 で 101秒 かかると誰しもが思うだろう。

ここまでおわかりだろうか
ところが現実は全く異なるのだ。




2.インターバル時間の弊害


僕は蛍の撮影や月光滝の撮影をするときはこれまで5秒〜4分というシャッタースピードで連写を行ってきた。
これは長時間露光を行うとデジタルではノイズが多く乗ってくるために、そのかわり連写で撮った画像をあとからレイヤ合成して長時間露光と同じ結果を得ようとするものである。

このときに連写のインターバル時間が長いと不都合なことが起こる。
下のサンプルを見て欲しい


A:蛍の撮影
  

これは今年ヒメボタルを撮ったときのもの
シャッタースピード30秒で10枚連写したものをレイヤ合成しているので合計5分相当のヒメボタルの光跡が写り込んでいる。
一匹の蛍の光跡が一本の点線のように続いているわけだが、矢印の部分は蛍の光が本来写っていないといけないのに写っていない。これは連写したときシャッターが閉じているインターバル時間にたまたま飛んでいたからそうなっているのだ。
ほぼ2回分の点滅が抜けている状態だが、ヒメボタルは1秒間にほぼ2回弱点滅するので最低1秒分は写っていないことになる。
インターバル時間が短ければ回避できたはず。


B:星の撮影
  

こちらは星の光跡を写したもの。
シャッタースピード90秒×4枚連写したものをレイヤ合成したものだ。
等倍にトリミングしたものなので、これを縮小すれば1本の光跡のように見えてくるのではあるが、明らかに光跡に隙間が出来ていてインターバル時間がわかる状態である。
これもインターバル時間が短ければ短いほど綺麗に繋がるだろう。

つまりインターバル時間が少ないカメラが僕にとって連写能力が高いカメラということになる。


それにしてもこの2枚の写真、よほど連写能力が低いカメラで撮ったのだと思われないだろうか。
実はいずれの写真も連続撮影速度最大3.5枚/秒のEOS KISS X2で撮っていて、インターバル時間は実際には1.4秒もあるのである。
最大3.5枚/秒ならインターバル時間は0.3秒前後になるはずなのに、何故1.4秒もかかるのだ!!


C:花火の撮影
  

花火の撮影ではレリーズを持ってバルブ撮影を行うのが常であるが、スターマインなど連写をしたいときにインターバル時間が長いとすぐに次のシャッターが切れない状態になってしまう。
これによって思っていた写真が撮れないという不具合が発生する。




3.連続撮影速度とインターバル時間の隔たり

そこで実際にインターバル時間がどのくらいあるのかを実際に計ってみた。
お店のカメラ(メディアは抜いてある状態)を以下のように設定した
 ・シャッタースピード 10秒
 ・連写(最速モード)
 ・シャッターを押すと同時にストップウォッチを押す
 ・そのまま10回連写する
 ・11回目にシャッターが切られるまでの時間を計測
これで10回サイクルの時間がわかる。ここから100秒を引いて残りの1/10が1回あたりのインターバル時間となる。
毎秒10コマ撮影できるカメラなら101秒という答えになるはずだと誰しもが考えるだろう。

実際の計測結果はこうだ。

機種 連続撮影速度 計測時間(秒) インターバル時間(秒/回) 計算値との隔たり
EOS KISS DN 最高 約3コマ/秒 106.59 0.66 2.0倍
EOS KISS F 最高 約3コマ/秒 109.73 0.97 2.9倍
EOS KISS X2 最高 約3.5コマ/秒 113.92 1.39 4.9倍
EOS 40D 最高 約6.5コマ/秒 111.36 1.14 7.4倍
EOS 5D 最高 約3コマ/秒 112.18 1.21 3.6倍
EOS-1D MarkV 最高 約10コマ/秒 109.67 0.97 9.7倍
EOS-1Ds MarkV 最高 約5コマ/秒
D40 最高 約2.5コマ/秒
D60 最高 約3コマ/秒
D80 最高 約3コマ/秒
D300 最高 約6コマ/秒 103.06 0.31 1.9倍
D700 最高 約8コマ/秒 102.73 0.27 2.2倍
D3 最高 約11コマ/秒
 n=1

これを見るとお分かりだろう
メーカーの発表している連続撮影速度と実際のインターバル時間とは全く関連性が無い

長時間露光下でCanonのカメラは軒並み連写能力が低下していてNikonのカメラはその落ち込みが少ない
連写能力が優れると言われる1Dや40Dも1秒間はシャッターが切れない状態で、実はsonyのα700やオリンパスのE520にさえも負けてしまうのである

これだけを見るとNikonのD300やD700が蛍や星の撮影にはむいているということになるだろう。

僕はCanonユーザーなのでメーカーに何とかして欲しいと思わずにいられない。
実はこのことに気づいたのは4年前発売されたKissデジタルNに比べて最新機種のインターバル時間が長くなっていると感じたからだ。
メーカーは一方で連写能力を向上させたと言っておきながら、実は改悪となっているのが実情なのだ。
(実はCanonの場合こういった長時間露光の撮影をするとRAWデータに乗っているノイズは最新機種の方が多い傾向にあり、実際には改悪のモデルチェンジとなっている。4年前のカメラで撮ったRAWデータを最新DPPやRITで現像するのがベストの結果になる)

メーカーは一部の良好なデータのみを取り上げてカタログに発表しているわけで、今後はこういった使い方をするユーザーのことも考えて公表する値を検討してもらいたいものだ。
できればこのインターバル時間を公表し、ぜひ「最短」と「最長」の両方を記載してもらいたいと思う。
そうすれば一般ユーザーがカメラ店に足を運んでストップウォッチを持って計るなんていう必要も無くなり、正しいカメラ選びが出来るようになるだろう。




    

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