女神たちの"愛のうた"を聴く


2010年12月23日、福山リーデンローズで「女神たちの"愛のうた"」というコンサートが開催された。
出演者は千住真理子・長谷川陽子・仲道郁代の3人。
日本トップクラスの3人がクリスマス前に福山で演奏する。これを見逃す手はない。
 
ヴァイオリンの千住真理子さんを生を聴くのはこれで3回目となるが、これまでこのページでたくさん紹介しているので今回は省略。

ピアノの仲道郁代さんは実は以前ぬまくまサンパルホールでソロコンサートを聴いたことがある。
経歴としてはメンデルスゾーンコンクール1位など数々の国際コンクールの受賞暦を持っておられ、今や日本を代表するピアニストの一人。尚、妹の祐子さんもピアニストとして活躍中だ。
これまでCDを聴いての印象としては(さっき数えてみたら彼女のCDが4枚、ついでに妹の祐子さんのCDは3枚あった^^)雰囲気を大切にする人で、壊れるような強烈な音は出さない。音(ペダル?)はやや響かせ気味。ルバート(タメ)なんかはあまり効かせないタイプ。・・・といったところかな^^;
サンパルホールの時の印象は「とてもきれいでおっとりしていて優しい雰囲気の女性。甘えさせてくれるようなタイプ。なにか音を口で表しながら曲に入り込んで演奏する人」という印象。旦那さんが羨ましい^^;
恥ずかしながら実は演奏自体よりも彼女の魅力の方に気持ちが行っていて演奏は良く憶えていない
実は個人的にはどっちかというと男らしくて研ぎ澄まされたようなピアノが好きということもあり、そんなこんなで感想のページは書かなかった。

チェロの長谷川陽子さんは生で聴くのは今回が初めて、(彼女もコンサート中に福山は初めてとおっしゃっていたが)
でもCDでは何度も聞いたことがある。
彼女は桐朋音楽大学からシベリウス・アカデミーの出身で、15歳で日本音楽コンクール第2位受賞、ロストロポーヴィッチ国際チェロコンクール特別賞、村松賞など多数の受賞経歴を持つ。こちらも日本を代表するチェリストの一人だ。
僕の彼女のCDとの出会いはデビューアルバム「珠玉のチェロ名曲集」。
このCDが確かレコード芸術で特選だったかステレオ誌で特選だったかで初めてチェロのアルバムを買ってみたのだった。
そのCDはチェロの魅力を充分に堪能させてくれ、録音も素晴らしかったということから、今は4枚の彼女のCDを持っている。でも彼女以外のチェリストのCDはなぜか1枚づつしか持っていない。
彼女のCDが魅力なのは、彼女の奏でるチェロの響きの美しさ・豊かさが特に僕のようなオーディオマニアにはピッタリだと感じるからだ。




さて当日のコンサートプログラムは
第一部
J.S.バッハ   :無伴奏チェロ組曲第1番より「プレリュード」                 Vc
サン・サーンス :組曲動物の謝肉祭より「白鳥」                        Vc・Pf
ショパン    :序奏と華麗なるポロネーズ ハ長調 op.3                   Vc・Pf
        :夜想曲第20番 嬰ハ短調 遺作「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」 Pf
        :バラード 第1番 ト短調 op.23                       Pf
クライスラー  :愛の悲しみ                                  Vn・Pf
        :愛の喜び                                   Vn・Pf
第二部
J.S.バッハ   :無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 ホ短調より「ガヴォット」   Vn
千住 明    :NHKアニメ劇場「雪の女王」よりスノーダイヤモンド             Vn
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調                       Vn・Vc・Pf


 という演奏曲目となっている。どの曲も楽しみ。



最初に長谷川陽子さんが登場、そのままバッハのプレリュードが淡々と演奏される。
想像通りの美しい響き。チェロってこんないい音がするんだと再認識した。
次の白鳥では仲道さんと二人で登場。仲道さんがピアノの伴奏は白鳥の水かきの音だと話して場を和ませる。
ピアノの伴奏はソロを引き立たせるようにチェロとの競演のときは低音側は控えめに、ヴァイオリンとの競演では高音側を控えめにという説明。とても気を使うんだとか

仲道さんは意外に良く話をされる方だと今回感じた。
それも千住さんと一緒だと年代が同じせいかまるでご近所の主婦の会話のように・・・^^
これに長谷川さんが加わると、長谷川さんは二人の大先輩の影でいつも控えめな伴奏のようだ
実際は3人とも40代のはずなんだけどね
長谷川さんはとても温和な感じの人で好感が持てた。ファンクラブがあるというのも頷ける。
それにしても3人とも話し方が上品で、みんな育ちの良いお嬢様なんだろうという雰囲気がいっぱい伝わってくる。
楽屋トークもなんとなく想像できるような・・・

演奏の方はというと、仲道さんのショパンのバラードは圧巻。
そして最後のメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲は特に素晴らしかった。
1楽章が終わったときに拍手が沸いたが、4楽章の曲の途中での拍手というのは普通はしないもの。
でも僕も拍手したいと思った。そしたら後ろから拍手。これは決して間違えて拍手をしているのではないと思った。
つまらない話だが、たとえばブラームスの4番の初演の時は各楽章おきに長い拍手が沸いたらしい。3楽章の時はその場でアンコールされ再度演奏。全曲終了後には1楽章と3楽章がもう一度演奏されたというエピソードがある。
無意識に手をたたいてしまうのはしかたないし、とても自然なことで決してマナー違反なんかじゃないと僕は思う。素晴らしい演奏なら・・・
今回の1楽章の演奏に拍手が沸くというのはとても自然なことの様に感じられた。それくらい良かった。

今年はいいクリスマスになりそうだ。