広島交響楽団第18回福山定期演奏会、松田理奈を聴く
 

 
2012年2月5日、広島交響楽団第18回福山定期演奏会。
2年ぶりに広響を聴くチャンスに恵まれた。

この日のプログラムは

  1.チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35  Vn:松田理奈
         〜 休憩 〜
  2.ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲「展覧会の絵」

というシンプルなもの。
指揮は広響常任指揮者の秋山和慶氏である



今回の興味はなんといっても松田理奈。
1985年、神奈川県横浜市出身とある。
プログラムの照会文の中に生まれ年の記載があること自体が珍しいが、若干26歳の新進気鋭のヴァイオリニスト。
  桐朋学園からドイツ・ニュルンベルグ音楽大学に編入して首席で卒業。
  2001年、日本モーツアルト音楽コンクール1位
  2004年、日本音楽コンクール1位
  2007年、サラサーテ国際音楽コンクールディプロマ入賞
これまでN響はじめ日本の有名オケとの共演も果たしている。

容姿は小柄でキュートというかとても愛らしい。

そしてこの彼女、小学校中学校のころ福山に住んでいたことがあるらしい。
ただ彼女のブログを読んでみると、福山であまり良い記憶がないそうである。

福山ゆかりのこの松田理奈というヴァイオリニストがいったいどんな演奏をするのか。
2週間ほど前に諏訪内晶子の演奏を聞いたばかりだが、それと比べてどうだろうか。
演奏曲目がチャイコのヴァイオリン協奏曲となると超有名曲だから、会場のお客さんで知らない人はいないだろう。僕も諏訪内晶子はじめ他の演奏家の演奏を山ほど聴いたことがある。本人もきっとプレッシャーがかかってるんだろうな



彼女は黒の衣装で登場。
見た目では実年齢よりも若く見えた。
ショートカットでまだやんちゃな女の子という感じがする

チャイコフスキーの演奏が始まった
身体を揺らしながら弾く彼女の演奏はところどころ粗いと思わせるところもあるけれど、なかなかのテクニックを持っていて、しっかり弾いていてそして熱がこもっている。
チャイコフスキーのメリハリとロマンティシズムがうまく表現されていて聴いていて感動した。
音質はさほど美しいという感覚は持たなかったが、深く鋭い感じのする音。それがガダニーニというヴァイオリンによるものなのか彼女自身の音なのか・・・
つい先日聴いたストラドの諏訪内晶子とは全然異なる音質なので、余計にそう感じたのかもしれない。
もし彼女がストラドを弾いたらどんな音になるんだろう・・・

曲が終わると同時に周囲あちこちから「ブラボー」の声。
たしかに良い演奏だった。

彼女は深くお辞儀をして一旦舞台裏に戻り、そして拍手に促されてまた登場。それが何度か続いた。
そのときにふと見えた足元。彼女は裸足だった。

そして、彼女はアンコールの拍手に答え、イザイ:ヴァイオリンソナタ第2番1楽章を演奏した。こちらもまた彼女に似合った曲だと思えるような演奏だった。



家に帰ってから少しネットで調べてみたが、彼女が裸足で演奏することについて、彼女は音を床からも感じたいからそうしているのだそうだ。
そしてふと裸足で弾くヴァイオリニストがいたことを僕は思い出した。
昔、コンクールの予選会かなにかが福山であったときに、ドレスなのに裸足でヴァイオリンを弾くとても上手な小学生がいたことを・・・

そのときの少女が松田理奈本人だったかどうかは今でははっきりしないが、もしかしたら僕は昔から彼女を知っていたのかもしれないと思い、すこし誇らしげに感じた。
一方、聴衆の中には裸足で演奏をすることを嫌う人もいるのではないか少し気にかかる。


コンサートが終了して、サイン会があった。
その際、彼女は福山ゆかりというだけあって、親しげに彼女と話をする人が多くいた。
自分もそれに混じってサインをもらう。
彼女は僕に対してもそして誰に対しても気さくに話をしてくれて、きっとファンを大切にする人なんだろうと好感を持った。

今回の演奏を聴いて
彼女はまだまだこれから伸びていく成長過程の演奏家だと思う。
今後に期待をして見守って行きたいものだ





ここまで広響について触れなかったが、広響はとてもいい演奏をしていた。
前回も同じことを書いたけど、聴くたびになんかレベルアップしてきていると感じる。
今回一緒に聞いていた友人も同じことを感想で言っていた。
弦の音がさらに厚くなって、演奏された「展覧会の絵」は迫力満点。木管も上手い。息も良くあっている。特に弦の後列の人が上手になってきてるんじゃないかなと僕は想像した。

広響は地方のオーケストラではあるが、いまや東京のメジャーなオケと比べてもほとんど遜色ないんじゃないだろうか。
常任指揮者の秋山氏そしてスタッフの人たちには本当に感謝をしたい気持ち。
こういったレベルの高いオケを持つ県民であることに誇りを持ちたいと思う。

アンコールのエウゲニ・オネーギンも快演で、乗りの良さをとても感じた
指揮の秋山氏も気持ちよさそう^^




次の広響の定期がますます楽しみになってきた