広島交響楽団第16回福山定期演奏会を聴く
 

  炎のコバケン広響登場。―― チャイコフスキーの名作に魂をこめる


 
ブラボーー!!ブラボーー!!・・・・
横からは涙を堪えられない人の鼻水をすする音・・・
チャイコフスキーの5番の演奏が終了したそのとき、会場全体は賞賛の嵐に包まれた。



2010年2月7日、広島交響楽団第16回福山定期演奏会。
炎のコバケンこと小林研一郎が広響をつれて福山にやってきた。

この日のプログラムは

  1.グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」〜序曲
  2.モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 k.466
     piano:小林亜矢乃
         〜 休憩 〜
  3.チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 op.64


僕の記憶ではそもそもコバケンはチャイコの5番のCDを出したときに一躍有名になったのではないかと思う。そのコバケンの最も得意とするチャイコの5番が生でそれも福山で聴けるとあってはこれをほっておく手はない。
いさんでリーデンローズに予約の電話をしたところ1Fの良い席はすでに完売済み。今回は2F中央の響きの良いところの席から聴くことになった。


1曲目のルスランとリュドミラから広響は快調な鳴りっぷり。
エンジンがかかるのが遅いという印象のある広響だが、今日ばかりは違った。

2曲目のモーツアルトは小林亜矢乃のピアノがとても丹精だった。このひと小林研一郎の娘さんなんだけど、お父さんに似ず可愛い(^^ゞ
外見の華やかさからの影響もあったのだろうか、曲を聴いていると本物のモーツアルトが弾いている様な錯覚に陥った。モーツアルトだったら実際こんな風に弾くんじゃないだろうかと・・・・良い演奏だったと思う。
曲が終わってブラボーの声。大きな拍手があったがしばらくして鳴り止み、残念ながらピアノのアンコールは無し。出来ればソロで一曲聴いてみたかった。

休憩がおわって待望のチャイコの5番。
冒頭のクラリネットが素晴らしい。ゆっくりとしたテンポで見事に会場に響いている。
コバケンの指揮はそれにしてもテンポの動きが激しい。急に遅くなったり急に加速したりでほんとに揺れる揺れる・・・それはまるで船酔いするほどでついでに音楽にも酔ってしまう(^^;;;
これがコバケン節か・・・ちょっといいかも(^^ゞ
一方そのテンポの揺れにも広響はアンサンブルの乱れなく完璧についていっている。
指揮をみてみるとコバケンの棒はややオーバーでとてもわかりやすい。さらに指揮しながら唸るわけだから余計に合うのかもしれない。

広響は一昨年にまして良くなった気がする。というかどんどんうまくなっている気がする。
一時期経営危機が噂されたこともあったが、事業仕分けで予算削減でもあるとさらに辛いだろうに、それに対抗するためなのか定期演奏会を聞くたびにより多くの感動を与えてくれる。
今回ふと気付いたのが編成で、なんとコントラバス奏者が7人もいたことだ。これはいつもよりは多いのではないか?チェロも8人ビオラは9人(違ってたらごめんなさい)。あきらかに低音部を増強していないか?コバケンの指示なのかな?少なくともそんなに広響にメンバーはいないと思うのでトラだと思うが、これが音の厚みを増している。

フィナーレはまさに炎のコバケンだ。ガンガンやってくる。前進あるのみ!
全休止のあとの予想通りの加速。ホルンはベルアップ!(まるでのだめオーケストラみたいだ(;^_^A)
そして指揮棒が12時を差したまま動かなくなった。オケの思い通りに演奏しろということだ。広響はそれに応えるように燃えた演奏をする。しばしの感動の瞬間。
最後の最後はまた急加速のあとテンポを落としてエンディング。

そして冒頭に書いたブラボーの嵐となる。
これほどのブラボーの声をリーデンローズで初めて聞いた。観衆と演奏者が一体となって燃えた演奏だったと思った。こういった機会に恵まれたことに本当に感謝!

コバケンは指揮台から降りてから挨拶。
この人は指揮台の上ではまさに棒を振るだけで決しておじぎなどはしない。本当に謙虚な人だと思う。
拍手の中、楽団員ひとりひとりと握手をし讃え合っている。
職員からコバケン本人に渡された花束はクラリネット奏者のひとに投げて渡した
この人は人柄がとてもよさそうだ。

アンコールはドボルザークのユーモレスク
ここでもコバケン節が炸裂!
これほど感動することはないと思うほどのコンサートだった。

次の広響の定期がますます楽しみになってきた