広島交響楽団第14回福山定期演奏会を聴く

 

〜オーケストラの翼にロマンをのせて〜


http://hirokyo.or.jp/
 
2008年3月9日、広島交響楽団の第14回福山定期演奏会を聴きにリーデンローズに行ってきた。

 今年は「オーケストラの翼にロマンをのせて」という良くわけのわからないタイトルだが、結局ロマン派の曲を演奏しますということだろう。
演奏曲目はメンデルスゾーン・シューマン・ブラームスというラインナップ。大取がブラームスの一番という人気曲である。

2005年の第12回定期公演では秋山氏がブラームスの4番を振ったわけだが、そのときのブラームスはロマン的でなかなか素晴らしい演奏だった。前回の13回定期公演の金聖響氏が振った「英雄」は今ひとつの仕上がり。さて今回は一時期広響の正指揮者だった飯森氏の指揮。どんな演奏が聴けるのだろう。

今回の僕の席は1F7列。これは実質的に前から2列目。ずいぶん前の席になったもんだが、予約したときにはもうこんなところしか空いてなかった。ピアノコンチェルトはピアノの下側から聴くことになるのでどうかと思うが、オーケストラの演奏者の顔は良く見える。


さてこの日のプログラムは

  1.メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
  2.シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
         〜 休憩 〜
  3.ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68


最初のフィンガルの洞窟の演奏はごめんなさい、あんまり良く憶えてない。
初めの曲はだいたいいつも鳴りが悪い気がする。こちらの耳の準備が出来てないからかも(^^ゞ あんまりメンデルスゾーンは好きじゃないのです。

ピアノが舞台中央に運ばれてきて2曲目の準備が整う。
想像よりもピアノのは近くて、ピアノ底面が見える状態。
うーん・・・低音が強調されるかもしれないと感じる。

すこししてピアニストの小菅優さんが登場してきた。
小柄でふくよかな感じの女性だ。表情から芯の強さを感じさせる。

僕は失礼ながら小菅優さんについてこれまでほとんど知識がなかった。
パンフレットを見るとコンクールなどの優勝経験があるわけでもないのに数多くのヨーロッパ有名オケと競演し、2005年にはカーネギーホールでのリサイタル、2006年にはザルツブルグ音楽祭では日本ピアニストでは内田光子以来二人目となるリサイタルをも果たしている。
あとから調べたことだが、彼女は10歳でドイツ(ザルツブルグ)に留学、15歳でCDデビュー、そのうちの一枚がドイツ批評誌で5つ星の評価を受け、それからは演奏によって着実に評価を上げていった人ということである。
競演したオケは「ベルリン交響楽団、フィンランド放送交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、ハンブルク北ドイツ放送交響楽団、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー、メクレンブルク−フォアポメルン国立劇場オーケストラ、南ドイツ・フィルハーモニーコンスタンツ、サンクトペテルブルク交響楽団、シンガポール交響楽団、フランス国立放送交響楽団・・・」と驚くばかりの実績を持っている。
日本人二人目のザルツブルグ音楽祭でのリサイタルという経歴は彼女のドイツでの地元であるという幸運もあったかもしれないが、それを確実にものにしてきているということになるだろう。
1983年生まれということだから、現在24歳ということになるだろうか。
パンフレットに年齢がわかる数字が書かれているというのも非常に珍しいことだ。

さて、僕はこういった知識も無く彼女のシューマンのピアノコンチェルトを聞くことになった。

シューマンのピアノコンチェルトの冒頭はとても有名な閃くようなffのパッセージで始まりすぐに叙情的で繊細な第一主題が始まる。
ここでどんな音になるのかが最初のポイント
ところがどうもピアノの煌きが無い。残念ながら高音部分が頭の上を抜けていっているようで、すこしこもったような音に聞こえた。
だいたいリーデンローズのスタインウェイはそんなに派手な音がするピアノではないのだが、これには少しがっかり・・・やっぱり席がちょっと前すぎたようだ
1楽章が進み、彼女のピアノはとても正確でダイナミック。一流ピアニストと感じさせる部分が随所にある。座った席のせいか演奏は剛直で飾り気が無く野太い印象さえ持った。
途中ところどころで彼女特有のリズム感というのを感じるところもある。
曲が進んでいくにつれ彼女のダイナミックな部分が増していく。広響はとても上手くついてきていてピアノとうまく融合しているイメージだ。ピアノとオケのバトルを感じるようなコンチェルトも面白いが、そういったことは微塵も感じられない。
最終楽章になってさらに彼女のダイナミズムが増してきた気がする。オケに負けない大音量で、ミスタッチもほとんど無く迫力の中で曲は終わった。

大きな拍手に誘われて、ピアノソロのアンコールがあった。
コンサートの途中でアンコールに応えてもらえるのは最近は珍しい気がする。
このサービス精神には好感が持てた。

彼女の僕の印象は「若い・パワー・素直・上手」
昨年小山実稚恵のピアノを聴いたが、テクニックは負けないぐらいありそうな感じ。パワーや表現力は小山さんの域に至るまでもう少しという印象だった。




休憩を挟んで今度は「ブライチ」だ。
この曲は「のだめカンタービレ」でも取り上げられるようにブラームスの交響曲の中で一番有名な曲。ブラームス好きな僕はこの曲のCDを10枚以上持っていてブラームスの4番の次に多い。
コンサートでも人気がある曲で数年前このリーデンローズでN響の演奏も聴いた。
今回飯森範親氏&広響がどんな演奏を聞かせてくれるのか楽しみ。


ブラームスは新古典主義と言われるが、スコアにはマーラーのような多くの脚注は書かれておらず、演奏は古典派の演奏とロマン派の演奏に大きく大別される。1楽章の前奏が始まり、この演奏は後者であるということがすぐ伝わってきた。現在ではロマン的な解釈が主流を成しているというのと、このコンサートのタイトルからもおよその見当は付いていた。
飯森氏の指揮はややオーバーアクションのような気がしないでもないが、見ていてとてもわかりやすく、広響のメンバーも演奏しやすいに違いないと感じた。
繰り返しは慣例によって無し。そういえば原典主義者の金聖響氏でさえ英雄の繰り返しは飛ばしていたから、最近スコアに書いてある繰り返しをすることは無いのだろう。

広響はほんとに弦が良くなったと思う。2005年に秋山氏のブラームスを聞いたときにもそう感じたが、さらに潤い豊かになって聴いていて気持ちがいい。
2楽章のコンマスのソロなんか鳥肌が立つほど良かった。

4楽章になってホルン・フルートがたまらない序奏を奏でる。僕のこの曲の一番好きな部分がここ。上手い!!続いて有名なハ長調の第九似の主題が流れて曲は盛り上がっていく。
この曲の演奏でもうひとつ気になっている部分は4楽章のコーダに入る部分でホルンが同じパッセージを2音あげて繰り返すところだ。これも英雄のところで書いたパターンと同じで、昔のホルンでは2回目のところは出ない音階が含まれており、原典スコアには2度目のところは木管で演奏するように書いてある。ここを最近ではホルンで2度とも演奏されるのが主流。金聖響氏の英雄では原典スコアどおりに2度目は木管。今回の飯森氏のブライチの場合はおそらく2度目はホルンだろう・・・・

!!!

そんなおり、最前列で指揮マネをしているおばちゃんのアクションが大きくなってきた。
最初は小さかったから気にもならなかったが、4楽章も中盤となると気が乗ってきたのだろう。それにしても最前列で飯森氏に負けないくらいのアクションで手を振るとは・・・気になって仕方ない。広響のメンバーだって気になるだろう。
またそれがちゃんと曲にあってればいいのだが基本の無いデタラメな動かし方。これが目に入るのだから迷惑千万!!

左隣のおばちゃんがパンフレットでその手振りおばちゃんが見えないように目の横を遮った。それでもお構いなしに指揮マネは大きくなっていく。思いきり指揮しているつもりだろう・・・・ああ気になる気になる
リーデンローズの人は注意しないのか!!曲の途中じゃやっぱりどうしようも無いんだろうか。かといって自分が出て行って注意するのも気が引ける((+_+))
広響のメンバーの顔を見てみるが顔色一つ変えず演奏に集中している。さすがプロ!!
隣の人は何もいわないのか?やっぱり僕が行かなきゃ誰もおばちゃんを止めようと思わないのか・・・

どうしようか・・・

ふと気が付いたら曲が終わっていた・・・・・
2度目はホルンだったんだろうか・・・

ああ、4楽章の後半はほとんどちゃんと聞けなかった(-_-;) 
情けない


リーデンローズの職員さん。あのおばちゃんを見たらお願いですから退場にしてください!
<(_ _)>





2008.4.9
リーデンローズのコンサート、広響の人の話を人づてに聞くことが出来た。
あのおばちゃんの指揮、やっぱり気になって仕方なかったのだそうだ。
「テンポはあってないわ変拍子は振れないで見てるとおかしくなりそうなので、目に入れないようにしようとするために自然に身体が内側を向いてきた」のだそうな^^;
それにしても変拍子は振れないなんてコメント、広響のメンバーもしっかり見てるじゃないか!どんな振り方するかチェックしてたんじゃないの??
「福山の名物おばちゃんかと思った」って・・・
少なくとも僕は初対面です!

しかしあの4楽章はちゃんと音楽になってたんだろうかね(^^ゞ