ベルリン交響楽団、イリア・カーラー(Vn)を聴く 
 

     


2016年7月17日(日)
福山リーデンローズ大ホールでベルリン交響楽団とイリヤ・カーラー(Vn)のコンサートがあった。

プログラムは
 ・エルガー 「愛のあいさつ」
 ・シューベルト 交響曲第7番ロ短調「未完成」
 ・チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調
 ・ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調「運命」
となっている。
昔のレコードだと鉄板といっていい「運命」「未完成」のカップリング。さらにチャイコのヴァイオリンコンチェルトともなると、誰も知らない人がいないほどの有名曲だらけ。
ツアーでのほかの場所では違うプログラムのようだから、福山ではよほど集客に心配があったのかなどと考えたりして・・・
いずれにせよ、飽きるほど聞いたことのある曲ばかりなので、どんな演奏を聞かせてもらえるのか楽しみだ。


ところでベルリン交響楽団という名前のオケは実はこれまで耳にしたことがなかったので、少し調べてみた。

ドイツ、ベルリンには多くのオーケストラがあり、超有名なベルリンフィルとこのベルリン交響楽団は全く別の団体。

「ベルリン」と名前の付くオーケストラと首席指揮者(音楽監督)としては
 ● ベルリンフィルハーモニー管弦楽団・・・・・・サイモン・ラトル
 ● シュターツカペレ・ベルリン・・・・・・・・・ダニエル・バレンボイム
 ● ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団・・・・イヴァン・フィッシャー
 ● ベルリン・ドイツ交響楽団・・・・・・・・・・トゥガン・ソヒエフ
 ● ベルリン放送交響楽団・・・・・・・・・・・・マレク・ヤノフスキ
 ● ベルリン室内管弦楽団・・・・・・・・・・・・カトリーヌ・ショルツ
 ● ベルリン古楽アカデミー
 ● ベルリン交響楽団・・・・・・・・・・・・・・リオール・シャンバダール
などがあるが
現在評価が高いのは上の二つまでかと思う・・・というか恥ずかしながら自分も上の二つしか名前を聞いたことがなかった。シャンバダールという指揮者も初耳。
とは言ってもドイツのオーケストラなので、どのオケもおそらく実力はそれなりだろう。

調べてみると
ベルリン交響楽団という名前はもともとは東西ドイツ時代の東ドイツ側のベルリンのオケの名前だったが、西ドイツ側が対抗してオケを立ち上げベルリン交響楽団(ベルリンシンフォニカ)と名乗るようになり、その後東側のベルリン交響楽団がベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団と呼ばれるようになってから、その西側のベルリン交響楽団だけがその名前を現在使用している。
ということのようだ。

一方、ヴァイオリンのイリヤ・カーラー(53歳)という人は結構有名。
ロシア出身で、コンクール歴として、パガニーニ国際コンクール・シベリウス国際コンクール・チャイコフスキー国際コンクールと1位を受賞していて、これら有名コンクール3つも1位をとっている人も珍しいかもしれない。



さて一部
まずエルガーの「愛のあいさつ」が始まった。
この曲、ヴァイオリンの曲というイメージが強いけど、ここではオケだけの演奏。
驚くほどのスローテンポでまずは腕慣らしといったところか
二曲目は「未完成」。
こちらも同じくスローペースで、その遅さ故かアンサンブルが時々乱れる。シャンバダールという指揮者はかなり個性的かもしれない。
三曲目になってイリヤ・カーラーが登場。チャイコのヴァイオリン協奏曲。
この曲ソロのヴァイオリンが登場するまでながーい前奏があるが、カーラーは第一ヴァイオリンのパートを一緒に途中演奏していた。こんなの初めて見たが、これが音慣らし・腕慣らしなのであれば、なるほど理には適っているのかもしれない。
ソロが登場してから感じたが、この人はとても多彩な音を弾く人だと思った。テンポもヴァイオリン主導で結構動かすけど、味のある素晴らしい演奏。オケをこの人がぐんぐん引っ張っている。演奏も白熱してきて弦も結構切れていた。
5か月前に、同じ曲を広響・木嶋真優で聞いたわけだけど、さすがに今回の方がテクニックもコントロールも趣もすべて上という感じ。
曲が終わってブラボーの声のあと、彼に対するアンコールを求める大きな拍手。
それに応えてバッハの無伴奏ソナタ第2番が演奏された。
しかしそれが終わってもアンコールの拍手は終わらない。
そんなとき楽団員が数人楽屋に引っ込んでしまった。
しかし、それでも彼は拍手に応え再度出てきて、そしてアンコール2曲目を演奏。
バッハ無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番を聞かせてくれた。
いずれも素晴らしい演奏で、そのサービス精神もあって自分は彼のファンになってしまった。


第2部はベートーヴェンの「運命」
ベルリン交響楽団の音色は美しく、音量もなかなかあるほうだと思う。
(この曲はそれほどのスローテンポでは始まらなかったが)しかし正直なところところどころで揃わない。
これがベルリンフィルだったら完璧なんだろうなぁ・・・・
本音を言って最近の広響の方が上を行っているんじゃないかという気がした。

アンコールは2曲。
ブラームスのハンガリー舞曲第5番とエルガーのエニグマ変奏曲「ニムロッド」
このアンコールピースはさすがに良く揃っていて、気持ちの良い演奏。
アンコール3曲目の催促の拍手に、シャンパダールが日本語で「アリガトウ、サヨナラ」

まずは楽しい演奏会だった。