化学調味料について

 

ラーメンの中に入れる”味の素”はいけないのか?

 先日岡山の「天神そば」にラーメンを食べに行った。
そのときそこの大将が一杯ずつ丼に「味の素」を小さじ1/3ほど入れていっていた。
普通は目撃しない光景なのでちょっとびっくり!
それで少し化学調味料について調べてみるとこにした。
どうもラーメンの場合、80%のお店で化学調味料が使われているようだ。
尾道ラーメン系だとまず100%使われている。
なお、中華料理だとおたまですくって入れる場合もあるようで、中華料理店症候群というものさえ存在するらしい
本当に化学調味料って大丈夫なのか不安になった。
僕は多少の化学の知識はもっているものの専門家ではない。
また僕は味の素などのメーカーとはなんら係わり合いは無く中立の立場であることも書き添えておく。

 

化学調味料ってなんだ?

味の素はL-グルタミン酸ナトリウム(アミノ酸)であることをご存知の方は多いと思う。
これは昆布などに多く含まれるもので「昆布の旨味」といわれるものだ。
表示は「調味料(アミノ酸)
いの一番・ハイミーはこのグルタミン酸ナトリウムに核酸系のイノシン酸ナトリウム・グアニル酸ナトリウムがさらに加わっている。
表示は「調味料(アミノ酸等)」となっている。
 

本来だしの中の「旨味」ってなんだ?

旨味は下記の4種類に大別される。
物質名 なんに含まれるか
1 グルタミン酸 昆布 アミノ酸系
2 イノシン酸 煮干・鰹節 核酸系
3 グアニル酸 干し椎茸 核酸系
4 コハク酸 貝類 その他

 

作り方は?

L-グルタミン酸ナトリウムは以前は石油合成法で作られていたが、現在はサトウキビから砂糖を精製する段階で出来た廃糖を微生物(菌)でアミノ酸に変え、その後、精製/中和/濃縮/結晶/乾燥して作られる。核酸系もほぼ同様。
また純度はとても高い。
 

自然のものと違うのか?

基本的に物質名が同じならどんな作り方をしても違う訳がない。科学の常識だ。
ただし自然のものは不純物が多く含まれている。
尚、ナトリウムは水中でグルタミン酸と分離してナトリウムイオン(+Na、塩分)となる
この塩分の含有量は塩の約1/3 

毒性はどうなんだろうか?

毒性(急性)は一般的にはLD50という主にネズミを使ったテストでの結果を用いて表される。
これは体重1kgのネズミに対して何グラムその物質を与えたら半分のネズミが死ぬかというもの。
自然食品や他のものもあわせて表記してみると

名称 LD50(mg) 人間(60kg)に換算
砂糖 30000 1800g
ブドウ糖 25000 1500g
グルタミン酸ナトリウム 16200 972g
ソルビン酸(防腐剤) 10500 630g
アルコール(エタノール) 7000 420g
クエン酸 7000 420g
食塩 4000 240g
炭酸水素ナトリウム 4000 240g
乳酸 3700 222g
ビタミンB1 3000 180g
リンゴ酸 3000 180g
安息香酸ナトリウム(防腐剤) 2000 120g
BHT(酸化防止剤) 1390 83.4g
サリチル酸(防腐剤) 1000 60g
アスピリン(医薬品) 750 45g
酢酸 300 18g
カフェイン 200 12g
DDT(殺虫剤) 113 6.78g
カプロサイシン(唐辛子の辛味) 65 3.9g
ニコチン 50 3g
アフラトキシンB1(カビ毒) 7 0.42g
シアン化カリウム(青酸カリ) 4 0.24g
α−アマニチン(テングダケ毒) 0.3 0.018g
テトロドトキシン(フグの毒) 0.0085 0.0005g

つまり人間で言うと、食塩(塩化ナトリウム)は一度に240gを食べると半数の人が死ぬかもしれない。
砂糖でも1.8kgを一度に食べると半数が死ぬかもしれないということ。
一応LD50が3000mg以上のものは安全ということになっているようで
グルタミン酸ナトリウムは塩の4倍安全ということになるのかもしれない?

しかし、よく考えると塩も砂糖も致死量というのはちゃんと存在している。
塩(塩化ナトリウム)は一度に240gを食べると命の危険があるわけだけど、一度じゃなくても何日かの間に240gは充分に人間はとっている。
カフェインは毒ともいえるけれど効能があるのもいうまでもないことで、フグの毒でもよく水洗いして薄くすれば充分食べることは可能だ。
つまり適度に薄くなっていれはどれを食べても問題ないともいえるし、どれも食べ過ぎると毒になるということだ。

薬はほぼ100%の確率で毒性が高いものばかりだ。用量を間違うと副作用があるということがわかっているから、一日にどのくらい飲みなさいと制限がつけられるわけだ。
毒をもって病を制するものが薬ということだ。

もっと単純にいうと食べ物に毒性のないものは無く安全な食べ物なんて無い、人間が対応できる程度の量であればなんでも食べてもかまわないともいえる。
まして自然食品も加工食品もこれに差はないと思われる。
クエン酸・ビタミンが身体にいいと言いながら、そればっかり摂取すると致死量に至ることもありえる。
結局はバランスがいい食べ方をすることが重要だ。
 

発ガン性については?

発ガン性についてはIARCという国際機関が以下の分類を行っている
分類 分類事例
グループ1:
  発がん性がある
アスベスト、たばこ、アルコール飲料、ダイオキシン、太陽光、女性ホルモン、塩漬けの魚、煤、ピロリ、肝炎ウィルス、X線 87種
グループ2A:
  おそらく発がん性がある
ホルムアルデヒド、紫外線、クレオソート(木材の防腐剤) 63種
グループ2B:
  発がん性があるかもしれない
コーヒー、漬物、わらび、ガソリン、超低周波磁界 232種
グループ3:
  発がん性を分類できない
コレステロール、お茶、水銀、カフェイン、原油、サッカリン、超低周波電界、静磁界、静電界 496種
グループ4:
  おそらく発がん性はない
カプロラクタム(ナイロンの原料) 1種

タバコの煙害と最近ずいぶん言われているけれど、アルコールも同じで発ガン性が人に対して在ると認められている。
他にも太陽光・女性ホルモンなんか避けて通れないものもある。
この87種以外のものについては人に対して発ガン性があるかどうか確認されているわけではない。
これらは徐々に確認されていくのではないかと思われるが、ひとついえることはグループ4の発ガン性がないとわかっているものは1つしか発見されてないということだ。
つまりほとんどの物質がよくわからないのである。
グループ2Bの”発ガン性があるかもしれない”というものを食べないようにするといっても、コーヒーや漬物を食べるなということが出来るだろうか?
焦げてるものは発癌性がある、燻製も発癌性がある。
このHPを見てほしい http://www.tanabe-shokuhin.co.jp/aosiru/kenkoutoaosiru/bunya/hatugansei/index.html
いったい発癌性の無いもので何が食べられるというんだろうか?
現時点では残念ながら発ガン性の無い食べ物は無いというのが結論だ。
アルコール飲料は発ガン性が認められているが、ビールのなかのホップは抗癌作用があると言われている。
これもある意味、発ガン性のあるもので癌を制すといえる。
このHPはちゃんとしたお医者さんが書いたもので興味深い http://www.geocities.com/HotSprings/4347/9710.html
コーヒーは発癌性が認められているが、実際には癌は増加していないというデータがあるようだ。
またこの中にあるように、「自然」「天然」イコール安全ではないというところに注意してほしい。
「天然物」というのは現在の法律では規制が無いのだ。
自然食品=安全 という神話は作り物である。
ところで正露丸はグループ1の発癌性が確認されており。全ての薬は発ガン性が有る(高い)とも聞いたことがある。
癌になりたくなければ薬を飲むなというのもまた真実だ。
まあ、酒やタバコをやる人が発癌性についてとやかく言えるものではない。
 

買ってはいけないという本について

「買ってはいけない」という本が売れたことがある。
これを読むと何が危ないとかいろんなことが書いてある。
 内容的にはある食品は食品添加物などの合成品が含まれているから危ないといったものがほとんどなのだが、何がどれだけの量入っているから危ないという記載は一切無い。肝心なところの量とバランスについての見解が無いのだ。
危険かもしれないものが微量でも含まれていると危険というのであれば全てのものが危険なものになってしまう。
さらによく考えてみると「合成品は中身がわかっているから危ないかもしれないということがわかる」ということで、「自然食品では何が含まれているのかということさえも調べられてもいない」のが大多数。自然食品は「これまで何も事故が無かったのだから大丈夫だ」という見解だからである。
 一方、大学の研究というものはネズミに死ぬまで一定のものをどんどん与え続けてネズミがおかしくなったところで「これに発ガン性があった」などと学会発表して評価されるものだ。
ここではどれだけの量を与え続けたという論議は薄められてしまい、”発癌性を発見した”という部分のみがクローズアップされる。そうじゃないと学会では研究が認められないという世界だ。
だから研究結果では「毒性のあるもの=発ガン性は無い」という結論になったりする。これは癌になる前にネズミが死ぬんだから仕方ない。環境ホルモン性についても似たようなもんだ。
 また天然のものの発癌性について大学で研究することはまずない。仮に発癌性を発見したところで、これまで「問題なかった」という歴史によって発癌性があることが薄められてしまい、論文の価値も希薄になってしまうからである。
 こういった本の一番の問題は、こういった一方向からしか物を考えない固有の製品をバッシングする本が売れてしまうために、あたかもそれが全てであるかのように広く誤解されるということだ。
 逆に言ってある固有の製品をバッシングする内容だからこそインパクトがあって売れたということで、出版した方はいいだろうがバッシングされた方は大迷惑だろう。
お気の毒としか言いようが無い。
 

それで、化学調味料は?

ちょっと話がそれてしまったけど、化学調味料に含まれるグルタミン酸ナトリウムというものはサトウキビから抽出して作るわけで、当然純度が高い。
ということは偏っているということもいえるわけだ。
これを自然のものから取ろうとすると大変な労力がかかる上に純度は低いものになってしまう。(不純物として「にがり」というものが発生する。)
この純度の良い旨味を安く簡単にふりかけて使えるのだから作る側から言うとこんなに楽なことは無い。
しかし、安くて手軽な旨味だからこそ量を多く使いすぎてしまう傾向があるともいえる
一番いけないのは、たとえば塩(塩化ナトリウム)を多く使うと不味いものになってしまうけど、化学調味料の場合はそんなに不味くならないということだ。
量の加減が”いいかげん”になってしまいがちで、結果として中華料理店症候群などといわれる化学調味料過多の料理が出来てしまうのではないだろうか。
また、不純物がないということもマイナスに作用することもあるだろう。
天然の塩は不純物としてミネラルなどが含まれているが、それが風味をかもし出している。
化学調味料で旨味を出した場合はその不純物(にがり)が無いことで天然の風味と異なってくるということもありえる。
従って使用するにはそれも考慮の上で利用することが望ましい。
ただし、これは健康上の問題とは違う次元の話。
結局は上手に化学調味料を適度に使用すれば味も健康も問題無いというのが僕の結論だ
ラーメンに使うこと自体はいいけど、量はほどほどにしてもらいたいと思う。
 

食品添加物について

食品添加物は化学調味料だけでなく酸化防止剤などいろんなところで使用されている。
調理品では食品添加物の入ってないものを探す方が難しいくらいだ。
しかし、この効用のおかげで食材は長持ちするし価格も安く出来ることになる。
(マーガリンなどは酸化防止剤だらけだ。アスコルビン酸やトコフェロールが主流)
結局はそのおかげで成り立っている食生活なのだから離れていくわけにはいかないだろう。
食品添加物が危ないといっている人たちは、使う人たちは信用できないから危険だといっているのに等しい。
問題はまさにそれを使う側の人間の問題。
とにかく食品添加物は抽出して出来た濃度の高いものだ。
節度を持った使用をお願いしたいものだと思う。